漢文の重要単語(疑問詞篇)の解説

お断り:この記事には、最初に倉橋先生とゆかいな仲間たちの戯れがあります。お急ぎの方は、上にある目次の見たい項目をクリックすると、その解説に飛びますので、そちらをご利用ください。なお、解説は真面目にしております。

忙しい、忙しい。

師走は、門下生の成績を付けたり、郷学所の片づけなどもしたり、本当に忙しい。

倉橋さん、仕事そんなに忙しいですか。
年末なんだから、少しゆっくりしたらどうですか?

あっ、白楽天先生。そうはいかないんです。
年末も働かなくちゃいけないんですよ。
貧乏だから。
昔から言いますでしょ。「貧乏暇なし」って。

貧乏?
倉橋さん、お金ないんですか?

お金ないんです…。

あなた、楽天カード持ってますか?

えっ?

楽天カードは年会費無料。
今なら、7000ポイントプレゼント!

持ってません!
それ、CMでやってるやつですよね?
ていうか、楽天カード。白楽天先生と全然関係ないですよ。

えっ?
楽天カードって、私のカードじゃないんですか?

違います!

そうですよ。白楽天さん。
楽天カードはあなたのカードではありません。
あれは、川平さんのカードです。

それも違います(笑)。

ていうか、あなた誰ですか?

むむむ。

自己紹介が遅れました。
私、韓愈と申します。

韓退之先生でしたか。
『唐詩紀事』の「推敲」でご有名な!
藩の講義でよくやります。
今日はどうされたのですか?

本日は、漢文の疑問詞について、ご指南するために参りました。

それは、それは。

是非、よろしくお願いします。

では、今回は、漢文の疑問詞について学習しましょう。

重要疑問詞一覧

一覧表で確認しましょう。全部で13個あります。

疑問詞 読み(現代仮名遣い) 意味

テ(カ)

何を以て(か)~。

【なにをもってか】

どうして~か。

幾何(幾許)(ゾ)

幾何(幾許)(ぞ)~。

【いくばくぞ】

どのくらい~か。

何為(胡為)レゾ

何為(胡為)れぞ~。

【なんすれぞ】

どうして~か。

如何(奈何)
如何(奈何)セン
如何(奈何)

如何(奈何)~。
如何(奈何)せん~。
如何(奈何)ぞ~。

【いかん・いかんせん・いかんぞ】

どのように~。
どうしようか。
どうして~か。

如(奈)目的語セン

「如何(奈何)」は、目的語の疑問のである場合、目的語を真ん中にはさみます。

目的語を如(奈)何せん~。

【いかんせん】

~をどうしようか。

何如(何若)

何如(何若)~。

【いかん】

~はどうであるか。

安(悪・焉)クンゾ

安(悪・焉・何)クニカ

安(悪・焉)くんぞ~。
【いづくんぞ】
安(悪・焉・何)くにか~。
【いづくにか】

どうして~か。

どこに~か。

孰(何)レカ

孰(誰)

孰(何)れか~。
【いづれか】

孰(誰)か~。
【たれか】

どれが~か。

誰が~か。

何許

何許~。

【いづこ】

どこ。

上記の他に「何(なんぞ)」という、最頻出の疑問詞もありますが、あまりにもよく出てくるため、入試では読みや意味の問題であまり問われません。ちなみに「何」の意味は「どうして~か」です。

では、教科書に収録されている文章で練習問題をやってみましょう。

練習問題

練習問題の正解

まず、傍線の読みのから確認して行きましょう。

傍線①の読み:いかんと

傍線②の読み:いかんすべき

傍線③の読み:なんをいかんせん

傍線④の読み:いくばくぞ

傍線⑤読み:いれかびなると

傍線⑥の読み:なにをもってここにいたらんと

傍線⑦の読み:はいこういくにかあると

上の正解で、赤色が付いている所は、現代仮名遣いで読んでいる所です。大学入試の問題では、大学によって、「現代仮名遣いで答えよ」と指示があるところもありますので、問題文をよく読むようにしましょう。

次に、傍線の和訳の正解を確認しましょう。赤色が付いている所が傍線の和訳です。

Ⅰの書き下し文と和訳

・書き下し文
或ひと曰はく、「子の矛を以て、子の楯を陥さば、何如。」と。

・和訳

ある人が言った、「あなたの矛でもって、あなたの楯を突いたらどうなるでしょうか。」と(『韓非子』「難一」)

Ⅱの書き下し文と和訳

・書き下し文
騅の逝かざる奈何すべき
虞や虞や若を奈何せん

・和訳
騅が進もうとしないのをどうしたらよいだろうか
虞よ、虞よ、そなたをどうしたらよいだろうか。(『史記』「項羽本紀」)

※学校では、「虞兮虞兮奈若何」を部分を反語で訳す(いやどうしようもない)ことが多いですが、項羽という英雄の最期の心の葛藤を表現するため、あえて疑問形にしています。

Ⅲの書き下し文と和訳

・書き下し文
而して浮生は夢のごとしごとし、歓びを為すこと幾何ぞ。

・和訳
そうしてはかないこの世は夢のようなもので、歓びを感じることはどのくらいあるだろうか。(李白「春夜宴桃李園序」)

Ⅳの書き下し文と和訳

・書き下し文
「吾と徐公と孰れか美なる。」と。

・和訳
「私と徐公とではどちらが美男であるか。」と。(『戦国策』「斉策」)

Ⅴの書き下し文と和訳

・書き下し文
「然らずんば、籍何を以て此に至らん。」と。

・和訳
「そうでなければ、私、籍はどうしてここに来るだろうか。」と(『史記』「項羽本紀」)

Ⅵの書き下し文と和訳

・書き下し文
項王曰はく、「沛公安くにか在る。」と。

・和訳
項羽は言った、「沛公劉邦はどこにいるか。」と(『史記』「項羽本紀」)

大学入試で疑問詞の問題は、副詞と異なり、読み以外に和訳させる問題も出題されます。疑問詞はひらがなで読めることはもちろんのこと、全体が和訳できるようにしておきましょう

【平住専庵作橘守国画『唐土訓蒙圖彙』(享保四年刊)を参考に挿入画を作成】

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