お断り:この記事には、最初に倉橋先生とゆかいな仲間たちの戯れがあります。お急ぎの方は、上にある目次の見たい項目をクリックすると、その解説に飛びますので、そちらをご利用ください。なお、解説は真面目にしております。
あれ?
罪人なんて
罪人なんて
珍しいなあ。
さあ、さっさと
歩きなさい。
なんで私がこんなことに?
何か訳ありそうですね?
よろしければお話、
伺いますが。
お侍さん、私は無実です。
親切心で行ったのに、
越権行為として罪に
なりました。
お気の毒に…。
そういえば、同じ様な話が
『韓非子』に
あったような気が…。
是非、話して下さい。
話してくれたら、お礼に
いい物を差し上げます。
お礼は結構ですよ。
では、お話し致しましょう。
「侵官之害」本文
「侵官之害」書き下し文
※カギカッコの中のひらがなは現代仮名遣いの読み仮名です。色が付いている箇所は漢字をひらがなで書き下す箇所です。
①昔者(むかし)、韓(かん)の昭侯(しょうこう)、酔(え)ひて寝(い)ねたり。
②典冠(てんかん)の者(もの) 君(きみ)の寒(さむ)きを見(み)るや、故(ゆえ)に衣(い)を君(きみ)の上(うえ)に加(くわ)ふ。
③寝(しん)より覚(さ)めて説(よろこ)び、左右(さゆう)に問(と)ひて曰(い)はく、「誰(たれ)か衣(い)を加(くわ)ふる者(もの)ぞ。」と。
④左右(さゆう) 対(こた)へて曰(い)はく、「典冠(てんかん)なり。」と。
⑤君(きみ) 因(よ)りて典衣(てんい)と典冠(てんかん)とを兼(か)ね罪(つみ)せり。
語釈
語句 | 品詞と意味 |
①の文章 | |
昭侯 | 名詞。戦国時代の韓の君主の名前。 |
②の文章 | |
典冠 | 名詞。君主の冠を管理する者。 |
之 | 助詞。読みは「の」。意味は「~の」。 |
也 | 助詞。読みは「や」。意味は「~と」。 |
故二 | 接続詞。読みは「ゆえ(に)」。意味は「そのため」。 |
於 | 置き字。読まない書き下さない。 |
③の文章 | |
而 | 置き字。読まない書き下さない。 |
説ビ | 動詞。読みは「よろこ(び)」意味は「よろこぶ」。「悦」と同じ意味。 |
誰 | 疑問詞。読みは「たれ」。 |
左右 | 名詞。君主の左右にいる側近のこと。 |
④の文章 | |
対ヘテ | 動詞。読みは「こた(へて)」。意味は「返答する」。 |
⑤の文章 | |
因リテ | 接続詞。読みは「よ(りて)」。意味は「したがって・よって」。 |
兼ネ | 動詞。読みは「か(ね)」。意味は「ともに・あわせて」。 |
典衣 | 名詞。君主の衣服を管理する者。 |
与 | 助詞。読みは「と」。意味は「~と」。 |
「侵官之害」和訳・現代語訳
①昔、韓の昭侯が、酒に酔って寝てしまった。
②典冠が君主(昭侯)の寒そうな様子を見ると、そこで衣服を君主の体にかけた。
③(昭侯が)眠りから覚めて喜び、側近の者に尋ねて言った。「誰がこの衣服をかけてくれたのか。」と。
④側近の者が返答して言った。「典冠であります。」と。
⑤昭侯はしたがって典衣と典冠と二人を処罰した。
漢文「侵官之害」の重要事項
いかがでしたでしょうか。
最後にこの文章での
重要な所は次の通りです。
・②の文章は助詞が複数ありますので、書き下し文ができるようにしておきましょう。
・⑤の文章の返り点が付けられるようにしておきましょう。
続きは以下のリンクからどうぞ。
【山東京伝作北尾重政画『天剛垂楊柳』(寛政四年刊)を参考に挿入画を作成】