『宇治拾遺物語』「絵仏師良秀」の現代語訳と重要な品詞の解説1

お断り:この記事には、最初に倉橋先生とゆかいな仲間たちの戯れがあります。お急ぎの方は、上にある目次の見たい項目をクリックすると、その解説に飛びますので、そちらをご利用ください。なお、解説は真面目にしております。
この記事で解決できること
・高1の1学期の中間で学習する動詞の種類と活用形が分かります。
・現代語訳が分かります。
・定期試験でよく聞かれる所が分かります。
  
よーし。今日も
西友で買い物したなー。
あれ?家の前に、
誰かいる…。
  
  
  
  
  
  
すいませーん。ちょっと、
お聞きしたいんですけど、
この辺に絵仏師良秀さん、
いませんか?
  
  
  
  
良秀さん?
煙草屋の良秀さんなら、
この近所ですけど、
違いますか?
  
  
  
絵仏師じゃないと
ダメなんです。
私、光背を変えて
もらいたいんです。
  
  
※光背とは、仏像の背後についている光をかたどった装飾のことです。  
  
  
えっ?どうして
変えるんですか?
似合ってますよ。
円い光の光背。
  
  
  
  今、テレワークで
zoom使っているん
ですけど、まぶしいって
皆からクレームが来て。
  
  
  
  
おおー。確かに。
背景、光じゃ、
まぶしいですよねー。
  
    
  
だから、背景を
炎に変えてもらうんです。
あの人、炎描くの
上手だから。
  
  
  
そうですか。
でも、炎でも
まぶしくありません?
  
  
  
  
  
  いいえ。大丈夫です。
漆黒の炎にして
もらうんで。
  
  
  
そうですか(笑)。
漆黒の炎…。
イメージだいぶ、
変わりますねー。
  
  
    
  
いいんです。何事も
挑戦が大事ですから。
ところで、お侍さん、
「絵仏師良秀」の話、
知ってますか?
  
  
  
はい。
講義でやってますからね。
  
  
  
  
  
  
もし、よかったら、
講義してくれませんか?
是非、聞きたいなぁ。
  
  
  
  
いいですよ。
講義致しましょう。
  
  
  
  

本文

 これも今は昔、絵仏師良秀【注1】といふありけり【注2】。家の隣より、火出で来て【注3】、風おしおほひ【注4】て、せめけれ【注5】ば、逃げ出でて、大路【注6】出でにけり【注7】。人【注8】書かする【注9】仏もおはしけり【注10】。また、【注11】着ぬ【注12】妻子【注13】なども、さながら【注14】内にありけり。それも知らず【注15】、ただ逃げ出でたる【注16】ことにして【注17】、向かひのつら【注18】立てり【注19】
見れ【注20】ば、すでに我が家に移りて、煙、炎くゆりける【注21】まで、おほかた【注22】、向かひのつらに立ちて眺めけれ【注23】ば、「あさましき【注24】こと。」とて、人ども、【注25】とぶらひけれ【注26】ど、騒がず【注27】。「いかに【注28】。」と、人、言ひけれ【注29】ば、向かひに立ちて、家【注30】焼くる【注31】【注32】て、うちうなづきて、時々笑ひけり【注33】

重要な品詞と語句の解説

語句【注】 品詞と意味
1 絵仏師良秀 未詳。絵仏師は仏の絵を描く職。
2 ありけり ラ変動詞「あり」の連用形+過去の助動詞「けり」の終止形。意味は「いた」。
3 出で来 カ変動詞「出で来(く)」の連用形。意味は「出てくる」。
4 おしおほひ ハ行四段動詞「おしおほふ」の連用形。意味は「激しく覆いかぶさる」。
5 せめけれ マ行下二段動詞「せむ」の連用形+過去の助動詞「けり」の已然形。意味は「迫ってきた」。
6 大路 名詞。意味は「大通り」。読みは「おおち」。
7 出でにけり ダ行下二段動詞「出づ」の連用形+完了の助動詞「なり」の連用形+過去の助動詞「けり」の終止形。意味は「出てしまった」。
8 の 格助詞の主格。意味は「~が」。
9 書かする カ行四段動詞「書く」の未然形+使役の助動詞「す」の連体形。意味は「描かせる」。
10 おはしけり サ変動詞「おはす」の連用形+過去の助動詞「けり」の終止形。意味は「いらっしゃった」。「おはし」は尊敬語で、「仏」に対する敬意。
11 衣 名詞。意味は「着物」。読みは「きぬ」
12 着ぬ カ行上一段動詞「着る」の未然形+打消の助動詞「ず」の連体形。意味は「着ていない」。
13 妻子 名詞。読みは「めこ」。
14 さながら 副詞。意味は「そのまま」。
15 知らず ラ行四段動詞「知る」の未然形+打消の助動詞「ず」の連用形。意味は「知らない」。
16 逃げ出でたる ダ行下二段動詞「逃げ出づ」の連用形+完了の助動詞「たり」の連体形。意味は「逃げ出してしまった」。
17 ことにして 連語。意味は「よいことにして」。
18 つら 名詞。通りに面した側のこと。
19 立てり タ行四段動詞「立つ」の已然形+存続の助動詞「り」。意味は「立っている」。
20 見れ マ行上一段動詞「見る」の已然形
21 くゆりける ラ行四段動詞「くゆる」の連用形+過去の助動詞「けり」の連体形。意味は「立ち上った」。
22 おほかた 副詞。意味は「だいたい・およそ」。
23 眺めけれ マ行下二段動詞「眺む」の連用形+過去の助動詞「けり」の已然形。意味は「眺めた」。
24 あさましき シク活用の形容詞「あさまし」の連体形。意味は「驚く」。
25 来 カ変動詞「来(く)」の連用形。読みは「き」。
26 とぶらひけれ ハ行四段動詞「とぶらふ」の連用形+過去の助動詞「けり」の已然形。意味は「見舞った」。
27 騒がず ガ行四段動詞「騒ぐ」の未然形+打消の助動詞「ず」の終止形。意味は「騒がない」。
28 いかに 副詞。意味は「どうした」。
29 言ひけれ ハ行四段動詞「言ふ」の連用形+過去の助動詞「けり」の已然形。意味は「言った」。
30 の 格助詞の主格。意味は「~が」。
31 焼くる カ行下二段動詞「焼く」の連体形
32 見 マ行上一段動詞「見る」の連用形
33 笑ひけり ハ行四段動詞「笑ふ」の連用形+過去の助動詞「けり」の終止形。意味は「笑った」。

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現代語訳

 これも今となっては昔のことだが、絵仏師良秀という者がいた。(自分の)家の隣から火が出てきて、風が家を激しく覆いかぶさって、(火が)迫ってきたので、(良秀は家から)逃げ出して、大通りに出てしまった。(家の中には)他の人が(良秀に)描かかせている仏画も、いらっしゃった。また、(寝た時のままで)着物を着ていない妻や子どもたちも、そのまま家の中にいた。(良秀は)それも知らないで、ただ(自分ひとりが)逃げ出してしまったのをよいことにして、(大通りの)向こう側に立っている。
見ると、(火は)すでにわが家に移って、煙と炎が立ち上った時まで、だいたい、大通りの向こう側に立って眺めていたので、「驚いたことだ。」と言って、人々がやってきて見舞ったけれど、(良秀は)騒がない。「どうしたのだ。」と人が言うと、(良秀は)大通りの向かい側に立って、家が焼けるのを見て、うなずいて、時々笑った。
  

  

いかがでしたでしょうか。

この箇所で特に重要な文法事項は次の通りです。

  
  

・上にある「重要な品詞と語句の解説」で赤く色が付いてある動詞の種類と活用形が分かるようにしておきましょう。

・注6・11・13は漢字の読みができるようにしておきましょう。

  

続きは以下のリンクからどうぞ。

『宇治拾遺物語』「絵仏師良秀」の現代語訳と重要な品詞の解説2

  

【芝全交作北尾重政画『当世大通仏買帳』(天明元年刊)を参考に挿入画を作成】

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