古文の重要な尊敬語の意味と解説(召す・のたまふ・おはす・おぼす)

お断り:この記事には、最初に倉橋先生とゆかいな仲間たちの戯れがあります。お急ぎの方は、上にある目次の見たい項目をクリックすると、その解説に飛びますので、そちらをご利用ください。なお、解説は真面目にしております。
  
  
さて、明日の講義でやる
敬語の予習でもするか。
  
  
  
  
  
  

ちわーす。
ピザハットリです。
pizzaを届けに来ました。

  
  
  
えっ?
うち、ピザ頼んでない
ですけど…。
  
  
  
  
  
  
権兵衛の所にpizza、
届けに来たんだけど、
あんた、権兵衛じゃないの?
  
  
  
私は倉橋です。
権兵衛さんの家は
お隣です。
  
  
  
  
  
  
サンキュー。
じゃあ、pizza、
届けてくるわ。
  
  
  
  
お待ち下さい。
さっきからピザって
言ってるけど、手に
持っているやつがそれ?
  
  
  
  
  
そうだよ。
シーフードpizza。
  
  
  
  
それ、どう見ても、
台の物だよ。
  
  
  
  
※台の物とは、江戸時代に仕出し屋から茶屋や遊女屋に運ばれる大きな台に載った料理のことです。
  
  
やべっ、間違えた。
取りに帰ろう。
ところで、おっさん。
今何してたの?

  
  
  
明日の講義でやる尊敬語を
勉強してました。
  
  
  
  
  
  
おっ、それ、
俺にも聞かせて。
俺、敬語できないから。
  
  
  
  
そうですよねー。
さっきから敬語、全然
使ってないですもんね。
よろしい。講義しましょう。
  
  
  

尊敬語とは

尊敬語とは、動作をしている人に対して敬意を表す時に用いる言葉です。
  
  
さっそく、例文を見てみましょう。
  
かぐや姫いといたく泣き給ふ。(『竹取物語』「嘆き」)
(現代語訳)
かぐや姫はとてもひどく泣きなさる
  
  
  
上の文章の主語はかぐや姫です。
  
動詞は「泣く」ですが、主語であるかぐや姫に敬意を表すために、「給ふ」という尊敬語の補助動詞を「泣く」の後ろに付けます。
  
現代語訳では補助動詞「給ふ」があるので、「泣きなさる」と訳しています。
  
  
尊敬語の訳は、「お~になる」か「~なさる」と訳すのが一般的です。
  
  
ただ、現代日本語でもそうですが、なんでもかんでも「給ふ」を付ければ、尊敬語になるというわけではありません。(現代日本語でも、食べるの尊敬語を「召しあがる」で「お食べになる」とは言いません)
  
  
「給ふ」を付けない尊敬語が、大学入試ではよく聞かれます。
  
  
今回は特に重要な尊敬語の動詞4つを確認しましょう。
  
  

①「召す」の意味と例文

「召す」は、サ行四段動詞で「呼ぶ」・「食ふ」・「飲む」・「乗る」・「着る」の尊敬語です。
意味は、
・「呼ぶ」の尊敬語の場合→「お呼びになる
・「食ふ」の尊敬語の場合→「召し上がる
・「飲む」の尊敬語の場合→「お飲みになる
・「乗る」の尊敬語の場合→「お乗りになる
・「着る」の尊敬語の場合→「お召しになる
です。
  
例文を見てみましょう。
  
○「呼ぶ」の尊敬語の「召す」
惟光召して、御帳・御屏風など、あたりあたり、したてさせ給ふ。(『源氏物語』「若紫」)
  
(現代語訳)
光源氏は)惟光をお呼びになって、(若紫のために)帳台や屏風などを、あちこちに配置させなさる。
  
この文章の主語は「光源氏」で、「呼ぶ」の尊敬語の「召す」は「お呼びになる」と訳します。
  
  
  
○「食ふ」の尊敬語の「召す」
御粥や蒜などを、もしやと含め参らすれば、少し召し、また大殿籠りぬ。(『讃岐典侍日記』「しるしの箱」)
  
(現代語訳)
お粥やにんにくなどを、もしかしたらと思い、天皇の御口に含み差し上げたところ、少しお召し上がりになり、また、お休みになられた。
  
この文章の主語は「天皇」で、「食ふ」の尊敬語の「召す」は「召し上がる」と訳します。
  
  
  
○「飲む」の尊敬語の「召す」
さし置かれつる杯とり給ひて、あまたたび召し、(『大鏡』「道隆」)
  
(現代語訳)
中納言は)置いてある杯をおとりになって、たくさんお酒をお飲みになって
  
この文章の主語は「中納言」で、「飲む」の尊敬語の「召す」は「お飲みになる」と訳します。
  
  
  
○「乗る」の尊敬語の「召す」
舟を寄せ、「ここへ召し候へ。」とて、楫取りのそばに乗せ奉る。(『義経記』「如意の渡りにて義経を弁慶打ち奉る事」)
  
(現代語訳)
(渡しの守の権頭は)舟を寄せて、「(判官殿は)ここにお乗りになってくだされ。」と言って、船頭のそばに乗せ差し上げた。
  
「召し」があるカギカッコの文章の主語は「判官殿」で、「乗る」の尊敬語の「召す」は「お乗りになる」と訳します。
  
  
  
○「着る」の尊敬語の「召す」
青色の御唐衣、蝶をいろいろに織りたりし、召したりし。(『建礼門院右京大夫集』)
  
(現代語訳)
女院は)青色の唐衣で、蝶を色とりどりに織っているものを、お召しになっていた。
  
この文章の主語は「女院」で、「着る」の尊敬語の「召す」は「お召しになる」と訳します。
  
  
  

②「のたまふ」の意味と例文

「のたまふ」はハ行四段動詞で「言ふ」の尊敬語です。
意味は「おっしゃる」です。
  
例文を見てみましょう。
  
○「言ふ」の尊敬語の「のたまふ」
「いづら、少将の君。」とのたまへば、(『堤中納言物語』「このついで」)
  
(現代語訳)
(中納言の君が)「さあ、次は少将の君の番よ。」とおっしゃるので、
  
この文章の主語は「中納言の君」で、「言ふ」の尊敬語の「のたまふ」は「おっしゃる」と訳します。
  
  
  

③「おはす」の意味と例文

「おはす」はサ変動詞で、「あり」「居る」・「行く」・「来」の尊敬語です。
意味は、
・「あり」「居る」の尊敬語の場合→「いらっしゃる
・「行く」の尊敬語の場合→「お出かけになる
・「来」の尊敬語の場合→「おいでになる
です。
  
  
例文を見てみましょう。
  
○「あり」「居る」の尊敬語の「おはす」
「朝ごと夕ごとに見る竹の中におはするにて、知りぬ。」(『竹取物語』「おひたち」)
  
(現代語訳)
(翁は)「毎朝毎晩見る竹の中に(かぐや姫が)いらっしゃるので、分かった。」
  
カギカッコの中にある「おはする」の主語は「かぐや姫」で、「あり」「居る」の尊敬語の「おはす」は「いらっしゃる」と訳します。
  
  
  
○「行く」の尊敬語の「おはす」
御供に、むつましき四五人ばかりして、まだ暁におはす。(『源氏物語』「若紫」)
  
(現代語訳)
光源氏は)御供に、親しい者を四、五人ほど伴って、まだ夜明け前にお出かけになる
  
この文章の主語は「光源氏」で、「行く」の尊敬語の「おはす」は「お出かけになる」と訳します。
  
  
  
「来」の尊敬語の「おはす」
かかるほどに、門をたたきて、「くらもちの皇子おはしたり。」と告ぐ。(『竹取物語』「蓬莱の玉の枝」)
  
(現代語訳)
こうしているうちに、(従者が)門を叩いて、「くらもちの皇子おいでになりました」と告げた。
  
カギカッコの文章の主語は「くらもちの皇子」で、「来」の尊敬語の「おはす」は「おいでになる」と訳します。
  
  
  

④「おぼす」の意味と例文

  
「おぼす」はサ行四段動詞で、「思ふ」の尊敬語です。
意味は、「お思いになる」です。
  
  
例文を見てみましょう。
  
  
○「思ふ」の尊敬語の「おぼす」
これを聞きて、かぐや姫すこしあはれとおぼしけり。(『竹取物語』「燕の子安貝」)
  
(現代語訳)
これを聞いて、かぐや姫は少し気の毒だとお思いになった。
  
この文章の主語は「かぐや姫」で、「思ふ」の尊敬語の「おぼす」は「お思いになる」と訳します。
  
  
  
いかがでしたでしょうか。
今回紹介した4つの尊敬語はよく大学入試で聞かれる重要単語ですので、必ず訳ができるようにしておきましょう。

  
  
  
  
ありがとうございました。
尊敬語というものが
よく分かりました。
  
  
  
  
おおー。
敬語表現できるように
なりましたねー。
これならピザ屋の配達
やっていけますよ。
  
  
  
  
あのー。お客さん。
さっきから
気になるんですけど…。
  
  
  
  
なんですか?
  
  
  
  
  
  
  
失礼ですけど、
「ピザ」じゃなくて、
「ピッツァ」です!!
  
  
  
  
  
細けー。
サンドイッチマンの
ネタでそんなん
あったわ。
  
  
  
【市場通笑作『魚と水通和者交』(天明五年刊)を参考に挿入画を作成】
【アマゾンリンク】


サンドウィッチマンのエンタねた VOL.4 エンタの神様ベストセレクション [DVD]

シェアする

スポンサーリンク