目次
倉橋先生
「にて」の品詞分解が
教師失格ですねー。
もう郷学所、解散した方が
遊んでいる佐吉君に
言われたくないなあー。
誰か来ないかなー。
芝全交先生、
いらっしゃいますか?
倉橋ではないか。
「にて」の種類の解説(全5種類)
「にて」の種類は全部で5種類あります。難易度は星の色の数で表示してます。
① ナ変動詞「死ぬ」の連用形の「死に」+接続助詞「て」 ★☆☆☆☆
② ナ行上一段動詞「似る・煮る」の連用形の「似・煮」+接続助詞「て」 ★☆☆☆☆
③ ナリ活用の形容動詞の連用形の活用語尾「に」+接続助詞「て」 ★★☆☆☆
④ 断定の助動詞「なり」の連用形の「に」+接続助詞「て」 ★★★★★
⑤ 格助詞「にて」 ★★★★★
詳しい解説をします。
① ナ変動詞「死ぬ」の連用形の「死に」+接続助詞「て」
まず、簡単に見分けられるものから見ていきましょう。
「死にて」となっていたら、ナ変動詞「死ぬ」の連用形に、接続助詞の「で」がくっついた形で、意味は「死んで・亡くなって」となります。
例文を見てみましょう。
【『宇治拾遺物語』巻第三「因幡国の別当、地蔵造り差す事」】
(亡くなって六日目という日の午後二時ごろに、急にこの棺が動き出した。)
「にて」の前に「死」という語があるので、簡単に識別できます。
② ナ行上一段動詞「似る・煮る」の連用形の「似・煮」+接続助詞「て」
②は①と同じで見分け方がすごく簡単です。
「て」の前に、「似」か「煮」という語があるかで見分けられます。両方ともナ行上一段動詞の連用形です。
意味はほとんどそのままで「似て」は「似て・似ていて」、「煮て」は「煮て」です。
例文を見てみましょう。
○父に似てもあらで、いとをかしげなる女君なりけり。
【『落窪物語』巻之三】
(父に似ていないで、とてもかわいらしい姫君であった。)
○鯉のほそくび、水もたまらず打おとし、ぐつぐつとかい煮て、したたか食て、
【『一休ばなし』巻之一】
(鯉の細首を、すぱっと切り落とし、ぐつぐつ煮て、たらふく食べて、
「に」の所が漢字で書かれている本文が、ほとんどですので難しくありません。
③ ナリ活用の形容動詞の連用形の活用語尾「に」+接続助詞「て」
③は①・②に比べたら、少し難しいかもしれませんが、一回覚えてしまえば簡単です。
例文を見てみましょう。
○大和の国なりける人のむすめ、いと清らにてありけるを、
【『大和物語』一五四段】
(大和の国に住んでいた人の娘が、とても美しい人であったが、)
○今日は、日いとうららかにて、田子の浦に打ち出づ。
【『十六夜日記』駿河路】
(今日は、日の光がとてものどかで、田子の浦に出る。)
○いざよふ月をおぼし忘れざりけるにや、いと優しくあはれにて、
【『十六夜日記』月影の谷】
(十六夜の月をお思い、お忘れでなかったのであろうか、本当に優しくしみじみとして)
「にて」の前に形容動詞的な表現(例:静か・清らか・鮮やか・あはれなど)があったら、この識別になります。
④ 断定の助動詞「なり」の連用形の「に」+接続助詞「て」
④は「にて」の識別の中で、大学入試によく出題されます。5種類の中で一番大事ですので、きちんと覚えておきましょう。
見分け方は2つあります。
1、「にて」の前に体言(名詞や代名詞など)や活用語の連体形がある
2、「にて」の後ろの文章に「あり」や「おはす」や「まします」など存在を表わす語がある
意味は「~で、~であって」となります。
例文を見てみましょう。
○装束も解かで丸寝にてありければ、
【『今昔物語集』馬盗人】
(衣服も脱がないで丸寝の状態であったので、)
○あの客僧こそ判官殿にておはしけれ。
【『義経記』如意の渡りにて義経を弁慶打ち奉る事】
(あの旅僧こそ、判官殿でいらっしゃいますのだ。)
○判官殿にてましまさずは、
【『義経記』如意の渡りにて義経を弁慶打ち奉る事】
(判官殿でいらっしゃらないことは、)
○彼の母の尼公、慈悲ある人にて、
【『沙石集』猿、恩を知ること】
(男の母の尼君が慈悲のある人であって、)
「にて」の後ろに存在を表わす語があれば、ほとんど④の断定の助動詞「なり」の連用形の「に」+接続助詞「て」となります。
ただ、『沙石集』の例文のように存在を表わす語がなくても、④の時もありますので、注意が必要です。
⑤ 格助詞「にて」
⑤は④と似ていて、判断しにくい場合があります。
見分け方は2つあります。
1、「にて」の前に体言(名詞や代名詞など)や活用語の連体形がある
2、「にて」の前に場所や方法、原因や資格などを表わす語がある
意味は「~で、~によって、~として」となります。
例文を見てみましょう。
○浦近き山もとにて、風いと荒し。
【『十六夜日記』月影の谷】
(海岸に近い山の麓で、風がとても強い。)→場所
○弓矢の道の手立てにも、名将の案・計らひにて、思ひの外なる手立てにて、強敵にも勝つことあり。
【『風姿花伝』「秘する花を知ること】
(武芸の道の方法でも、名将の考え・判断で、思ってもいなかった方法で、強敵にも勝つことがある。)→最初に「にて」が原因、二つ目の「にて」が方法
○太政大臣にて二年、世をしらせ給ふ。
【『大鏡』兼家伝】
(太政大臣として二年、天下をお治めになる。)→資格
「にて」の前にある語が④と同じ体言(名詞や代名詞など)や活用語の連体形ですので、ぱっと見、判断しにくいのですが、訳してみて場所や方法、原因や資格となったら、⑤となります。
特に場所はたくさん出てきますので、地名があったら基本場所を表わす格助詞となります。
まとめ
まとめです。
・5種類のうち、一番入試や試験で聞かれるのは、④断定の助動詞「なり」の連用形の「に」+接続助詞「て」。
・④と⑤は識別しづらいので、「にて」の後ろに「あり」や「おはす」や「まします」など存在を表わす語があるかをまず確認する。→あったら④
・場所を表わす語の後ろ「にて」が付く場合が多いので、その時は⑤の可能性が高い。
まあ、よく見れば
そんなに難しくないから
きちんと覚えるのが、
よいじゃろう。
いやー。全交先生、
ありがとうございました。
激ムズでしたけど、
なんとか覚えます。
そうか。よろしい。
それで、謝礼の方
なんじゃが…。
わし一人暮らしじゃから
猫がほしくてのう…。
猫!!!それなら家に
色々な人が置いてった
猫がたくさんいます。
それを差し上げます。
そうか。それなら、
次回来る時に
連れてきてくれ。
【『あつめ草』(江戸後期刊)を参考に挿入画を作成】
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