では、「侵官之害」の前回の続きの文章を見ていきましょう。
前回の解説はこちら。
「侵官之害」本文
「侵官之害」書き下し文
※カギカッコの中のひらがなは現代仮名遣いの読み仮名です。色が付いている箇所は漢字をひらがなで書き下す箇所です。
⑥其(そ)の典衣(てんい)を罪(つみ)せるは、以(も)つて其の事を失ふと為(な)せばなり。
⑦其の典冠(てんかん)を罪せるは、以つて其の職を越(こ)ゆと為せばなり。
⑧寒きを悪(にく)まざるに非(あら)ざるなり。
⑨以為(おも)へらく、官を侵(おか)すの害は、寒きよりも甚(はなは)だしと。
⑩故(ゆえ)に明主(めいしゅ)の臣を畜(やしな)ふや、臣は官を越えて功有るを得ず、言を陳(の)べて当(あ)たらざるを得(え)ず。
⑪官を越ゆれば則(すなわ)ち死(ころ)され、当たらざれば則ち罪せらる。
語釈
語句 | 品詞と意味 |
⑥の文章 | |
以テ為セバAト | 連語。重要句形。読みは「もつ(て)A(と)な(せば)」。意味は「Aとする・Aと思う」。 |
失フ | 動詞。意味は「しくじる」。 |
事 | 名詞。ここでは「仕事・業務」という意味。 |
也 | 断定の助動詞。読みは「なり」。意味は「~である」。 |
⑦の文章 | |
職 | 名詞。意味は「職務」。 |
⑧の文章 | |
非ザル不ルニA | 連語。重要句形。読みは「Aざ(るに)あら(ざる)」。意味は「Aをしないのではない」。二重否定で強い肯定を表す。 |
悪マ | 動詞。読みは「にく(ま)」意味は「不快と思う」。 |
⑨の文章 | |
以為ヘラクAト | 連語。重要句形。読みは「A(と)おも(へらく)」。意味は「Aと思う」。 |
官 | 名詞。意味は「役目」。 |
之 | 助詞。読みは「の」。意味は「~の」。 |
甚ダシ | 形容詞。読みは「はなは(だし)」。意味は「はるかに大きい」。 |
於 | 置き字。読まない書き下さない。 |
⑩の文章 | |
故ニ | 接続詞。読みは「ゆえ(に)」。意味は「そのために」。 |
明主 | 名詞。意味は「賢明な君主」。 |
之 | 助詞。読みは「の」。意味は「~が」。 |
畜フ | 動詞。読みは「やしな(ふ)」。意味は「養い育てる」。 |
不得 | 連語。読みは「えず」。意味は「~できない」。 |
而 | 置き字。読まない書き下さない。 |
功 | 名詞。意味は「功績」。 |
陳ベ | 動詞。読みは「の(べ)」。意味は「述べる」。 |
不ル当タラ | 連語。読みは「あ(たら)ざ(る)」。意味は「引き受けない・仕事を引き受けない」。 |
⑪の文章 | |
則チ | 接続詞。読みは「すなわ(ち)」。意味は「その時は」。 |
死サレ | 動詞。読みは「ころ(され)」。意味は「死刑にされる」。 |
「侵官之害」和訳・現代語訳
⑥(昭侯が)典衣を処罰したのは、自分の業務をしくじったとみなしたからである。
⑦(昭侯が)典冠を処罰したのは、自分の職務を越えた業務を行ったとみなしたにからである。
⑧(昭侯は)寒さを不快と思わないわけではない。
⑨(他の役人の)役目を侵した害は、寒さからくる害よりもはるかに大きいと思ったからである。
⑩そのため賢明な君主が家臣を養い育てる時、家臣は自分の役目を越えて功績を上げることはできないし、意見を述べたらそのとおりに仕事を引き受けないことはできない。
⑪(家臣が)自分の役目を越えれば、その時は死刑にされ、(意見を述べてそのとおりに)仕事を引き受けなければその時は処罰される。
漢文「侵官之害」の重要事項
・重要句形(「以テ為セバAト」・「非ザル不ルニA」・「以為ヘラクAト」)は読みと意味が分かるようにしておきましょう。
・「則チ」・「悪マ」・「甚ダシ」・「故ニ」は読めるようにしておきましょう。
・⑩の文章の返り点が付けられるようにしておきましょう。
ありがとうございました。
やはり自分の役職を越えた
行為は帝王学に反するもの
なんですね。
いらないです!