『紫式部日記』「土御門邸の秋」の現代語訳と重要な品詞の解説1

お断り:この記事には、最初に倉橋先生とゆかいな仲間たちの戯れがあります。お急ぎの方は、上にある目次の見たい項目をクリックすると、その解説に飛びますので、そちらをご利用ください。なお、解説は真面目にしております。
  
  
さて、西友でオムツも買ったし、あとは、京伝先生のお店でたばこ入れでも買って帰るか。
  
※戯作者・山東京伝の本業は煙草入店です。
  
  
  
  
  
その声は、倉橋さん…。
こっちです。
助けてくださいー。
  
  
  
ん?
由井君の声が聞こえる。
また、捕まったのかな?
  
  
  
  
  
  
えっ?
なんか、閻魔大王と鬼みたいな人に捕まっているだけど…。
  
  
  
  
  
倉橋さん、いいところに
来ました。
助けて下さい。
  
  
  
  
由井君、どうしたの?
なんで捕まってるの?
  
  
  
  
  
  
そなた、小奴の知り合いか?
この不届き者は、勝手に
われらの敷地に
侵入していたのだ。
  
  
  
由井君、どうして入っちゃったの?
  
  
  
  
  
  
  
いやー。
最近、ポケモンGOに
はまってまして、
ポケストップが
あったんで、つい…。
  
  
  
  
  
だからって、勝手に地獄の敷地に入っちゃだめでしょ。
地獄のポケストップは、小閻魔様と鬼の特権なんだから。
  
  
  
  
  
というわけで、
小奴は処刑して、
地獄送りとなる。
  
  
  
  
  
えーー!
そんなー。
それはいくらなんでも
厳しすぎでは・・・。
  
  
  
  
  
えっ?
地獄送りになるんですか?
地獄でもポケモンGO
できるなら、喜んで
行きたいんですけど。
  
  
  
いやいや、由井君。
その発想、むちゃくちゃでしょ。
  
  
  
  
  
  
小閻魔様、是非、
私を地獄で送りして下さい。
お願いします。
倉橋さんからも
お願いして下さい。
  
  
  
  
えっ、私からもお願いするの?
  
  
  
  
  
  
後輩が困っているです。
協力して下さい。
そうだ、倉橋さん。
古典の講義しているんでしょ?
閻魔様にご講義差し上げて。
  
  
おっ、古典の講義なら、
わしも聞きたいものがある。
『紫式部日記』の
「土御門邸の秋」が
知りたいぞ。
  
  
  
また、ピンポイントに
指定しますね。
分かりました。
講義致しましょう。
  
  
  

本文

 秋のけはひ【注1】入りたつ【注2】ままに、土御門殿【注3】のありさま、言はむ【注4】かた【注5】なく【注6】をかし【注7】。池のわたりの梢ども、遣水【注8】のほとりのくさむら、おのがじし【注9】色づきわたりつつ、おほかた【注10】の空も艶なる【注11】に、もてはやされ【注12】て、不断【注13】御読経【注14】の声々、あはれ【注15】まさりけり【注16】やうやう【注17】涼しき【注18】風のけはひ【注19】に、例の【注20】絶えせぬ【注21】水のおとなひ【注22】夜もすがら【注23】聞きまがはさる【注24】

重要な品詞と語句の解説

語句【注】 品詞と意味
1 けはひ 名詞。意味は「雰囲気・様子」。
2 入りたつ タ行四段動詞「入りたつ」の連体形。意味は「深く入る」。
3 土御門殿 名詞。藤原道長の邸のこと。
4 言はむ ハ行四段動詞「言ふ」の未然形+婉曲の助動詞「む」の連体形。意味は「言うような」。

「む(ん)」の見分け方については、以下のページで詳しく解説をしていますので、よろしかったら、ご確認下さい。

助動詞「む(ん)」の識別の解説

5 かた 名詞。意味は「手段・方法」。
6 なく ク活用の形容詞「なし」の連用形。
7 をかし シク活用の形容詞「をかし」の終止形。意味は「趣がある・風情がある」。
8 遣水 名詞。寝殿造りなどで、庭に水を引き入れ、小川のようにしたもののこと。
9 おのがじし 副詞。意味は「それぞれ」。
10 おほかた 名詞。意味は「大部分・ほとんど」。
11 艶なる ナリ活用の形容動詞「艶(えん)なり」の連体形。意味は「あでやか・優美なさまである」。
12 もてはやされ サ行四段動詞「もてはやす」の未然形+受身の助動詞「る」の連用形。意味は「引き立てられる」。
13 不断 名詞。意味は「物事が絶えないこと・絶え間なく続くこと」。
14 御読経 名詞。ここでは、藤原道長の長女の彰子の安産祈願のため僧たちが読経をしている。
15 あはれ 名詞。意味は「しみじみとした感慨」。
16 まさりけり ラ行四段動詞「まさる」の連用形+過去の助動詞「けり」の終止形。意味は「つのった・強まった」。
17 やうやう 副詞。意味は「しだいに」。
18 涼しき シク活用の形容詞「涼し」の連体形。
19 けはひ 名詞。意味は「音・様子」。
20 例の 連語。意味は「いつもの」。
21 絶えせぬ サ変動詞「絶えす」の未然形+打消の助動詞「ず」の連体形。意味は「絶えない」。
22 おとなひ 名詞。意味は「音」。
23 夜もすがら 副詞。意味は「一晩中・夜通し」。
24 聞きまがはさる サ行四段動詞「聞きまがはす」の未然形+自発の助動詞「る」の終止形。意味は「区別がつかないように聞こえさせる」。

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現代語訳

 秋の雰囲気が深くなるにつれて、藤原道長様邸の様子は、言うような手段がないほど趣がある。池のあたりの梢や、遣水のほとりの草むらは、それぞれ色づき渡り、空全体も優美なのに引き立てられて、絶え間ない安産祈願の読経の声は、しみじみとした感慨を強ませた。しだいに涼しく感じさせる風の音に、いつもの絶えない遣水の音が、夜どおし(読経の声と入り交じって、)区別がつかないように聞こえさせる。

いかがでしたでしょうか。
この箇所は、藤原道長邸の秋の情景を述べた文章で、難しい文法事項はありません。

あえて、言うなら、助動詞の「む」や「る」の意味が分かるようしておけば、よいでしょう。

次の文章からは、敬語表現が出てきますので、そちら方を集中的に勉強するのがよいでしょう。

続きは以下のリンクからどうぞ。

『紫式部日記』「土御門邸の秋」の現代語訳と重要な品詞の解説2

【市場通笑作鳥居清長画『虚言弥二郎傾城誠』(安永八年刊)を参考に挿入画を作成】

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