『連理秘抄』「連歌は心より起こりて」現代語訳と重要な品詞の解説2

では、前回の続きの文章を見ていきましょう。

前回の解説はこちら。

『連理秘抄』「連歌は心より起こりて」現代語訳と重要な品詞の解説1

本文

 詞の幽玄【注1】生得【注2】のことなり【注3】。それも初めよりこはき【注4】連歌に練習しぬれ【注5】ば、やがて【注6】詞あらくなる【注7】幽玄なる【注8】に習へば、生得に不堪なる人も風体を得る【注9】なり【注10】。初心の人、ことに優しくおだやかに【注11】具足【注12】少なくするするとしたる【注13】句を思ふところなく口軽く【注14】付くべし【注15】。このほかゆめゆめ【注16】稽古に故実【注17】口伝【注18】もあるべからず【注19】

重要な品詞と語句の解説

語句【注】 品詞と意味
1 幽玄 名詞。連歌における美的理念。意味は「優艶な美」。
2 生得 名詞。意味は「生まれつき・天性」。読みは「しょうとく」。
3 なり 断定の助動詞「なり」の終止形。
4 こはき ク活用の形容詞「強(こは)し」の連体形。意味は「強い・勇ましい」。
5 ぬれ 完了の助動詞「ぬ」の已然形。意味は「~してしまう」。
6 やがて 副詞。意味は「すぐに・そのまま」。
7 なる ラ行四段動詞「なる」の終止形。
8 幽玄なる ナリ活用の形容動詞「幽玄なり」の連体形。
9 得る ア行下二段活用動詞「得(う)」の連体形。読みは「うる」。
10 なり 断定の助動詞「なり」の終止形。
11 おだやかに ナリ活用の形容動詞「おだやかなり」の連用形。
12 具足 名詞。意味は「連歌の素材」。
13 たる 存続の助動詞「たり」の連体形。
14 口軽く ク活用の形容詞「口軽し」の連用形。
15 べし 適当の助動詞「べし」の終止形。意味は「~するのがよい」。
16 ゆめゆめ 副詞。意味は「けっして」。
17 故実 名詞。意味は「手本となる古いしきたり・先例」。
18 口伝 名詞。意味は「口伝えの秘伝」。
19 べからず 当然の助動詞「べし」の未然形と打消の助動詞「ず」の終止形。意味は「あるはずがない」。

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現代語訳

 連歌の言葉が優艶な美であることは、生まれつきのことである。それでも最初から幽玄の正反対である勇ましい連歌を練習してしまうと、そのまま連歌の言葉は荒々しくなってしまう。連歌の優艶な美を習うと、生れつき未熟な人でも優れた表現様式を身につけられるのである。初心者は、特に優美でおだやかに、連歌で詠み込む素材を少なくし、滑らかでするするとしている句を、思慮分別があまりなく、口から出るにまかせて、前句に付けるのがよい。このほかに決して連歌の稽古において、先例も口伝えの秘伝もあるはずがない。

いかがでしたでしょうか。
この箇所で重要な文法事項は以下の通りです。

 

・「注7」と「注8」の「なる」の識別ができるようにしておきましょう。
 (注7が動詞で、注8が形容動詞の一部です)

・前半と同様に現代語訳が分かるようにしておきましょう。

ありがとうございました。
連歌の勉強の仕方が
よく分かりました。
島流しにされた島で、
練習に励みたいと思います。

そうですか。
島流しだと、もうおそらく
お会いできませんが、
由井君、どうかお元気で。

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