『世説新語』「漱石枕流」の書き下しと現代語訳と重要表現の解説

お断り:この記事には、最初に倉橋先生とゆかいな仲間たちの戯れがあります。お急ぎの方は、上にある目次の見たい項目をクリックすると、その解説に飛びますので、そちらをご利用ください。なお、解説は真面目にしております。
この記事で解決できること
・ひらがなで書き下す所が分かります。
・重要表現が分かります。
・現代語訳が分かります。
・定期試験でよく聞かれる所が分かります。
 
 
 
御免ください。
こちら夏目漱石先生の
ご自宅ですか?
 
 
 
違いますよ。
漱石先生の御自宅は
向丘の方ですよ。
  
 
 
※夏目漱石の旧居跡は東京都文京区向丘にあります。 
 
 
そうですか。
ところで、吾輩は
誰だと思いますか?
 
 
 
 
 
えっ、もしかして
猫?ですか?
吾輩だけに。
 
 
 
 
ブブー!!
猫じゃありませーん。
正解は狸でしたー。
 
 
 
 
紛らわしーい。
っていうか、
見た目猫だろー。
 
 
 
江戸時代の挿絵だと
これが狸なんですよ。
皆よく引っ掛かります。
 
 
 
 
くやしいー。
今度はこっちから
問題出していいですか? 
 
 
 
いいですよ。
吾輩、何でも
答えられますよ。
 
 
 
 
 
よろしい。では、
問題です。夏目漱石の
名前の由来は?
 
 
 
ガチの問題じゃん。
難しいよー。
教えて下さい。
 
 
 
 
 
分かりました。では、
『世説新語』「漱石枕流」
お話致しましょう。
 
 
 

「漱石枕流」本文

 

「漱石枕流」書き下し文

※カギカッコの中のひらがなは現代仮名遣いの読み仮名です。色が付いている箇所は漢字をひらがなで書き下す箇所です。助詞と助動詞はひらがなで書き下します。

①孫子荊(そんしけい)、年少(わか)き時隠れんと欲(ほっ)す。
②王武子(おうぶし)に語るに、当(まさ)に石に枕(まくら)し流れに漱(くちすす)がんとすといふべきに、
③誤りて曰(い)はく、「石に漱ぎ流れに枕せん。」と。
④王曰はく、「流れは枕すべく、石は漱ぐべきか。」と。
⑤孫曰はく、「流れに枕する所以(ゆえん)は、其(そ)の耳を洗はんと欲すればなり。
⑥石に漱ぐ所以は、其の歯を礪(みが)かんと欲すればなり。」と。

 

語釈

語句 品詞と意味
①の文章  
 孫子荊 人名。西晋の人。
 欲 動詞。読みは「ほっ(す)」意味は「~しようとする・望む」。
 隠 動詞。意味は「隠遁する・隠棲する」。
②の文章   
 王武子 人名。西晋の人。
  再読文字。読みは「当(まさ)に~べき」。意味は「当然~べきだ」。
 枕 動詞。読みは「まくら(し)」。意味は「枕にする」。
 漱ガントス 動詞。読みは「くちすす(がんとす)」。意味は「口をすすごうとする」。
 流 名詞。意味は「川の流れ」。
③の文章   
 曰ハク 動詞。読みは「い(はく)」。意味は「言った・言うことには」。
④の文章   
 可 助動詞。読みは「べ(く)」。意味は「~できる」。
 乎 助詞。読みは「か」。意味は「~か」。疑問を表す。
⑤の文章   
 所以 名詞。読みは「ゆえん」。意味は「理由・わけ」。
 其 指示語。読みは「そ(の)」。
⑥の文章   
 礪カン 動詞。読みは「みが(かん)」。意味は「みがこう」。

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「漱石枕流」和訳・現代語訳

①孫子荊が若い頃、(世を捨てて)隠遁しようと思った。
②王武子に語ろうとして、(隠遁生活に入ったら)当然、石を枕にして、清い川の流れで口をすすごうとするつもりだと言うべきところを、
③誤って、「石で口をすすぎ、流れを枕としようと思う。」と言ってしまった。
④(それを聞いた)王は、「流れを枕とすることができるのか。石で口をすすぐことができるのか。」と言った。
⑤(それに対して)孫は、こう言った。「流れを枕とするわけは、(俗説を聞いて汚れた)耳を洗おうと思うからさ。
⑥石で口をすすぐわけは、(俗世間のものを食べて汚れた)歯を磨こうと思うからさ。」と。

漢文「漱石枕流」の重要事項 

 
 
いかがでしたでしょうか。
最後にこの文章での
重要な所は次の通りです。
 
 
 

・②の文章にある再読文字「当」は重要句形ですので、書き下し文と訳ができるようにしておきましょう。

・④の文章は助動詞と助詞がありますので、書き下し文と訳ができるようにしておきましょう。

・「漱石枕流」の故事成語の意味が分かるようにしておきましょう。

「漱石枕流」は「ひどいこじつけのこと・負け惜しみが強いこと」という意味です。

 
 
いやー。
勉強になりました。
漱石先生はこれから
名前取ったんですね。
 
 
 
 
そうですよ。
狸さんも、ひどい
こじつけをしないように
気を付けましょうね。
 
 
 
はーい。分かりました。
ちなみに私、名前
あるんですよ。
「タマ」です。
 
 
 
飼い猫の名前でいる~。
めっちゃ紛らわしいー。
 
 
  

【 内田新好作喜多川歌麿画『明花春為化』(享和二年刊)を参考に挿入画を作成】

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