『徒然草』「丹波に出雲といふ所あり」の現代語訳と重要な品詞の解説1

お断り:この記事には、最初に倉橋先生とゆかいな仲間たちの戯れがあります。お急ぎの方は、上にある目次の見たい項目をクリックすると、その解説に飛びますので、そちらをご利用ください。なお、解説は真面目にしております。
  
  
おや、早馬が来る。
  
  
  
 
  
  
  
どけどけ。
道を開けろー。
乗り遅れるぞー。
  
  
  
  
すいません。
ちょっと、お聞きしますが、
どちらに向かわれて
いるのですか?  
  
  

  これから丹波に遊びに
行くんです。
GoToキャンペーンを
利用して。

   
  
えっ?
GoToキャンペーン?
あの旅行代金が補助される
あれですか?
  
  
  
そうそう。
とってもお得なので
これから行くんです。
お侍さんも利用
しないのですか?
  
  
  
  
私は江戸住まいなので、
割引の対象じゃ
ないんですよ。
それにまだ第2派が
来ていて怖いですし。
  
    
  
江戸住まい!可哀そうに。
コロナが収まるまで
どこにも遊びに
行けませんね(笑)。
  
  
笑いごとじゃ
ないですよ。どこか
遊びに行きたいです!!
ところで、丹波のどちらに
行くのですか?
  
  
  
  
出雲です。
大社を移したのを
見に行くんです。
  
  
ん?丹波の出雲…。
そんな話が『徒然草』に
載っていたような…。
  
  
    
  
それ。教えて下さい。
是非、聞きたい。
  
  
  
  
分かりました。
講義して差し上げましょう。
  
 
     

本文

 丹波【注1】出雲【注2】といふ所あり。大社【注3】移し【注4】て、めでたく【注5】造れり【注6】しだのなにがし【注7】とかや【注8】しる【注9】なれ【注10】ば、秋のころ、聖海上人【注11】、その外も人あまた【注12】さそひて、「いざたまへ【注13】、出雲拝み【注14】に。かいもちひ【注15】召させん【注16】。」とて、具し【注17】もて行きたる【注18】に、おのおの拝みて、ゆゆしく【注19】【注20】起こしたり【注21】

重要な品詞と語句の解説

語句【注】 品詞と意味
1 丹波 地名。現在の京都府中部と兵庫県中東部辺り。
2 出雲 地名。現在の京都府亀山市出雲。
3 大社 名詞。島根県出雲市にある出雲大社のこと。
4 移し サ行四段動詞「移す」の連用形。意味は「勧請する・神仏を別の場所に移す」。
5 めでたく ク活用の形容詞「めでたし」の連用形。意味は「すばらしい・立派だ」。
6 造れり ラ行四段動詞「造る」の已然形+存続の助動詞「り」の終止形。意味は「造営している」。
7 しだのなにがし 人名。未詳。
8 とかや 格助詞「と」+係助詞「か」+間投助詞「や」。意味は「~とかいう」。人物などの下に付いて、はっきりしない意を示す。
9 しる ラ行四段動詞「しる」の連体形。意味は「領有する・治める」。
10 なれ 断定の助動詞「なり」の已然形。
11 聖海上人 人名。未詳。
12 あまた 副詞。意味は「たくさん」。
13 いざたまへ 連語。意味は「さあ、行きましょう・さあ、いらっしゃい」。
14 拝み マ行四段動詞「拝む」の連用形。意味は「礼拝する」。
15 かいもちひ 名詞。意味は「ぼた餅・おはぎ」。
16 召させん サ行四段動詞「召す」の未然形+使役の助動詞「す」の未然形+意志の助動詞「ん」の終止形。意味は「ご馳走しましょう」。「召さ」は「食ふ」の尊敬語で、しだのなにがしから聖海上人に対する敬意。

「む(ん)」の見分け方については、以下のページで詳しく解説をしていますので、よろしかったら、ご確認下さい。

助動詞「む(ん)」の識別の解説

会話文の敬意の方向(誰から誰に)については、以下のページで詳しく解説をしていますので、よろしかったら、ご確認下さい。

古文の敬意の方向(誰から誰に)の解説

17 具し サ変動詞「具す」の連用形。意味は「連れていく」。
18 もて行きたる カ行四段動詞「もて行く」の連用形+完了の助動詞「たり」の連体形。意味は「一緒に行った」。
19 ゆゆしく シク活用形容詞「ゆゆし」の連用形。意味は「たいへん」。
20 信 名詞。意味は「信仰心」。
21 起こしたり サ行四段動詞「起こす」の連用形+完了の助動詞「たり」の終止形。意味は「おこした」。

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現代語訳

 丹波の国に出雲という所がある。(そこに)出雲大社を勧請して、(社殿を)立派に造営している。しだのなんとかいう人が領有する土地であるので、(そのしだのなんとかが)秋の頃に、聖海上人や、その他にもたくさん人を誘って、「さあ一緒に行きましょう、出雲神社を礼拝しに。ぼた餅もごちそうしましょう。」と言って、誘った人たちを連れて一緒に出雲に行った時に、それぞれが礼拝して、たいへん信仰心をおこした。
  

  

いかがでしたでしょうか。

この箇所で特に重要な文法事項は次の通りです。

  
  

・注13と注16は重要表現ですので、現代語訳ができるようにしておきましょう。

  

続きは以下のリンクからどうぞ。

『徒然草』「丹波に出雲といふ所あり」の現代語訳と重要な品詞の解説2

  

【七珍万宝作北尾政美画『花笑顔相指南枝』(寛政七年刊)を参考に挿入画を作成】

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