✔この記事で解決できること
・ひらがなで書き下す所が分かります。
・重要表現が分かります。
・現代語訳が分かります。
・定期試験でよく聞かれる所が分かります。
実に困ったなあ~。
こんな道端で何を
誰も気づいてくれ
名馬の鑑定人は滅多に
お話し致しましょう。
「雑説」本文
「雑説」書き下し文
※カギカッコの中のひらがなは現代仮名遣いの読み仮名です。色が付いている箇所は漢字をひらがなで書き下す箇所です。助詞と助動詞はひらがなで書き下します。
①世に伯楽(はくらく)有りて、然(しか)る後(のち)に千里の馬有り。
②千里の馬は常(つね)に有れども、伯楽は常には有らず。
③故(ゆえ)に名馬有りと雖(いえど)も、秖(た)だ奴隷人(どれいじん)の手に辱(はずかし)められ、
④槽櫪(そうれき)の間(かん)に駢死(へんし)して、
⑤千里を以(もっ)て称(しょう)せられざるなり。
⑥馬の千里なる者は、一食に或(ある)いは粟一石(ぞくいっせき)を尽(つ)くす。
⑦馬を食(やしな)ふ者は、其(そ)の能(のう)の千里なるを知りて食はざるなり。
⑧是(こ)の馬や、千里の能有りと雖も、
⑨食(しょく)飽(あ)かざれば、力足らずして、才の美(び)外(そと)に見(あらわ)れず。
語釈
語句 | 品詞と意味 |
①の文章 | |
伯楽 | 名詞。元々は星の名前であるが、ここでは「名馬を見分ける鑑定家」という意味。 |
然ル後ニ | 接続詞。意味は「そのあとで」。 |
千里ノ馬 | 名詞。一日に千里の距離を走れる名馬のこと。 |
②の文章 | |
常ニ | 副詞。意味は「いつも」。 |
而 | 置き字。読まない書き下さない。 |
不常ニハ有ラ | 重要表現。部分否定。読みは「つね(には)あ(ら)ず」。意味は「いつも~とはかぎらない」。 |
③の文章 | |
故ニ | 接続詞。意味は「だから・よって」。 |
雖モ~ト | 重要表現。読みは「~(と)いえど(も)」。意味は「たとえ~としても」。 |
秖ダ | 副詞。読みは「た(だ)」。意味は「ただ・ちょうど」。 |
辱メラレ | 動詞。読みは「はずかし(められ)」。意味は「粗末に扱われる」。 |
於 | 置き字。読まない書き下さない。受身を表す。 |
奴隷人 | 名詞。意味は「使用人・馬飼い」。 |
之 | 助詞。読みは「の」。意味は「~の」。 |
④の文章 | |
駢死シテ | 動詞。読みは「へんし(して)」。意味は「首を並べて死ぬ」。 |
於 | 置き字。読まない書き下さない。場所を表す。 |
槽櫪 | 名詞。読みは「そうれき」。意味は「馬小屋」。 |
⑤の文章 | |
不ル | 打消の助動詞。読みは「ざ(る)」。 |
以テ | 動詞。読みは「もっ(て)」。意味は「~として」。 |
称セラレ | 動詞。読みは「しょう(せられ)」。意味は「称賛される・称えられる」。 |
也 | 断定の助動詞。読みは「なり」。意味は「~である」。 |
⑥の文章 | |
之 | 助詞。読みは「の」。意味は「~で」。格助詞の同格。 |
或イハ | 副詞。読みは「ある(いは)」。意味は「ある時には」。 |
粟一石 | 名詞。読みは「ぞくいっせき」。粟は「穀物」、石は唐の時代の容量の単位。 |
⑦の文章 | |
食フ | 動詞。読みは「やしな(ふ)」。意味は「育てる・飼育する」。 |
不ル | 打消の助動詞。読みは「ざ(る)」。 |
其ノ | 指示語。読みは「そ(の)」。ここでは「馬」を指す。 |
能ノ | 名詞。意味は「能力」。 |
而 | 置き字。読まない書き下さない。順接を表す。 |
也 | 断定の助動詞。読みは「なり」。意味は「~である」。 |
⑧の文章 | |
是ノ | 指示語。読みは「こ(の)」。前の文章の馬を指す。 |
也 | 助詞。読みは「や」。上の語句を強める働きをする。 |
雖モ~ト | 重要表現。読みは「~(と)いえど(も)」。意味は「たとえ~としても」。 |
之 | 助詞。読みは「の」。意味は「~の」。 |
⑨の文章 | |
不レバ | 打消の助動詞。読みは「ざ(れば)」。 |
飽カ | 動詞。読みは「あ(か)」。意味は「十分満たされる・満腹になる」。 |
不シテ | 打消の助動詞。読みは「ず(して)」。 |
才ノ | 名詞。意味は「才能」。 |
美 | 名詞。意味は「よさ」。 |
不 | 打消の助動詞。読みは「ず」。 |
見レ | 動詞。読みは「あらわ(れ)」。意味は「現す」。 |
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「雑説」和訳・現代語訳
①この世では、名馬を見分ける鑑定家が先にいて、その後で一日に千里も走る名馬が現れるのである。
②千里を走る名馬はいつでも存在するのだが、(それを見抜ける)鑑定家はいつもいるとは限らない。
③だからたとえ名馬がいるとしても、ただ使用人の手で粗末に扱われ、
④馬小屋の中で、普通の馬と(一緒に)首を並べて死んで、
⑤千里の名馬だとして、称賛されないのである。
⑥馬で千里も走るものは、一回の食事で、ある時には穀物を一石も食べ尽くしてしまう。
⑦馬を育てる人は、その馬の能力で千里も走れる(という)ことを知っていて、育てているのではないのである。
⑧(だから)この馬は、たとえ千里を走れる能力があるとしても、
⑨食べ物が十分でなかったら、本来の力も発揮できず、才能のよさも外に現せない。
漢文「雑説」の重要事項
・⑤と⑦の文章は返り点と送り仮名を付けられるようにしておきましょう。
・②の文章は部分否定があるので、現代語訳ができるようにしておきましょう。
・⑤・⑦・⑧になる「也」の読みの違いが分かるようにしておきましょう。
・助詞と助動詞がある文章は書き下し文ができるようにしておきましょう。
続きは以下のリンクからどうぞ。
【 唐来参和作喜多川歌麿画『冠言葉七目十二支記』(寛政元年刊)を参考に挿入画を作成】