お断り:この記事には、最初に倉橋先生とゆかいな仲間たちの戯れがあります。お急ぎの方は、上にある目次の見たい項目をクリックすると、その解説に飛びますので、そちらをご利用ください。なお、解説は真面目にしております。
よーし。仕事終わったー。
帰りにコンビニによって、
帰りにコンビニによって、
アイスでも買うかー。
うめー。
この団子、
この団子、
うめぇなあー。
あれ?
そこにいるのは、
源蔵君では…。
講義の帰りに
寄り道ですか?
源蔵君では…。
講義の帰りに
寄り道ですか?
あっ、先生。
お疲れ様でーす。
お疲れ様でーす。
講義のついでにコンビニ
寄ったんっすよー。
寄ったんっすよー。
そうですか。
でももう暗くなってきたから
家に帰って明日のテストの
勉強でもしなさい。
でももう暗くなってきたから
家に帰って明日のテストの
勉強でもしなさい。
OK-。
ところで、先生は
藩校のついでにコンビニに
何しに来たんっすか?
ところで、先生は
藩校のついでにコンビニに
何しに来たんっすか?
えっ。
仕事終わりに
アイスでも買おうと思って。
仕事終わりに
アイスでも買おうと思って。
団子買いましょうよー。
うまいっすよー。
でも、最近団子の数、
減りましたよね?
うまいっすよー。
でも、最近団子の数、
減りましたよね?
ああ、5つから4つに
なったね。
なったね。
四文銭(しもんせん)が
流通してから一個減ったね。
※江戸時代の中期までは、団子は一串5個でしたが、四文銭という貨幣が明和5年(1768)に鋳造されてから一串4個になっていきました。
最近、ステルス値上げ
多くないですか?
増税のついでに
ポテトチップスの量
減らしたりとか。
多くないですか?
増税のついでに
ポテトチップスの量
減らしたりとか。
そうだね。
もう暗いから
団子食べたら、
帰りなさい。
帰りなさい。
先生、
団子食べてるついでに
講義してくれません?
明日テストなんで。
明日テストなんで。
えっつ?
団子のついでに
「このついで」の講義をする?
「このついで」の講義をする?
面白い地口(じぐち)だねー。
※「地口」とは、江戸時代に流行した語呂を合わせて作るダジャレのことです。
………。
くそつまんないっす。
地口はいいから
さっさと講義してください。
…。
分かりました。
やります。
本文
春のものとてながめさせ給ふ【注1】昼つ方、台盤所【注2】なる【注3】人々、「宰相中将【注4】こそ参り給ふなれ【注5】。例の【注6】御にほひいとしるく【注7】。」など言ふほどに、ついゐ給ひ【注8】て、「昨夜より殿【注9】に候ひし【注10】ほどに、やがて【注11】御使ひになむ【注12】。『東の対【注13】の紅梅の下に埋ませ給ひし【注14】薫き物、今日のつれづれに【注15】試みさせ給へ【注16】。』とてなむ【注17】。」とて、えならぬ【注18】枝に、白銀の壺二つつけ給へり【注19】。
中納言の君【注20】の【注21】、御帳【注22】のうちに参らせ給ひ【注23】て、御火取【注24】あまた【注25】して、若き人々やがて【注26】試みさせ給ひ【注27】て、少しさしのぞかせ給ひ【注28】て、御帳のそばの御座【注29】にかたはら臥させ給へり【注30】。紅梅の織物の御衣に、畳なはりたる【注31】御髪の裾ばかり見えたる【注32】に、これかれ【注33】、そこはかとなき【注34】物語、忍びやかに【注35】して、しばし候ひ給ふ【注36】。
中納言の君【注20】の【注21】、御帳【注22】のうちに参らせ給ひ【注23】て、御火取【注24】あまた【注25】して、若き人々やがて【注26】試みさせ給ひ【注27】て、少しさしのぞかせ給ひ【注28】て、御帳のそばの御座【注29】にかたはら臥させ給へり【注30】。紅梅の織物の御衣に、畳なはりたる【注31】御髪の裾ばかり見えたる【注32】に、これかれ【注33】、そこはかとなき【注34】物語、忍びやかに【注35】して、しばし候ひ給ふ【注36】。
重要な品詞と語句の解説
語句【注】 | 品詞と意味 |
1 ながめさせ給ふ | マ行下二段動詞「ながむ」の連用形+尊敬の助動詞「さす」の連用形+ハ行四段活用の補助動詞「給ふ」の連体形。意味は「ぼんやり眺めなさる」。「させ給ふ」は二重尊敬。中宮に対する敬意。 |
2 台盤所 | 名詞。清涼殿の一室で女房達の詰所のこと。 |
3 なる | 存在の助動詞「なり」の連体形。意味は「~にいる」。 |
4 宰相中将 | 名詞。中宮の兄弟。 |
5 参り給ふなれ | ラ行四段動詞「参る」の連用形+ハ行四段活用の補助動詞「給ふ」の終止形+推定の助動詞「なり」の已然形。意味は「参上なさったようだ」。「参り」は「行く」の謙譲語。「給ふ」は尊敬語。「参り」は中宮に対する敬意。「給ふ」は宰相中将に対する敬意。「なれ」は係助詞「こそ」に呼応している。 |
6 例の | 連語。意味は「いつもの」。 |
7 しるく | ク活用の形容詞「しるし」の連用形。意味は「はっきりしている」。「しるく」の後に「薫りたり」が省略されている。 |
8 ついゐ給ひ | ワ行上一段動詞「ついゐる」の連用形+ハ行四段活用の補助動詞「給ふ」の連用形。意味は「膝をついて座りなさる」。「給ひ」は尊敬語で、宰相中将に対する敬意。 |
9 殿 | 名詞。中宮と宰相中将の父の邸のこと。 |
10 候ひし | ハ行四段動詞「候ふ」の連用形+過去の助動詞「き」の連体形。意味は「おりました」。「候ひ」は「居り」の丁寧語で、中宮に対する敬意。 |
11 やがて | 副詞。意味は「そのまま」。 |
12 なむ | 係助詞。「なむ」の後に「参りたる」が省略されている。 |
13 対 | 名詞。寝殿造りの左右に建てた建物・対屋(たいのや)の略。 |
14 埋ませ給ひし | マ行四段動詞「埋む」の未然形+尊敬の助動詞「す」の連用形+ハ行四段活用の補助動詞「給ふ」の連用形+過去の助動詞「き」の連体形。意味は「お埋めになった」。「せ給ひ」は二重尊敬で、中宮に対する敬意。 |
15 つれづれに | ナリ活用の形容動詞「つれづれなり」の連用形。意味は「手持ち無沙汰なさま」。 |
16 試みさせ給へ | マ行上二段動詞「試む」の連用形+尊敬の助動詞「さす」の連用形+ハ行四段活用の補助動詞「給ふ」の命令形。意味は「お試しなさってください」。「させ給へ」は二重尊敬で、中宮に対する敬意。 |
17 なむ | 係助詞。「なむ」の後に「賜りて参りたる」が省略されている。 |
18 えならぬ | 連語。意味は「なんとも言いようがないほどすばらしい」。 |
19 つけ給へり | カ行下二段動詞「つく」の連用形+ハ行四段活用の補助動詞「給ふ」の已然形+存続の助動詞「り」の終止形。意味は「つけなさっている」。「給へ」は尊敬語で、宰相中将に対する敬意。 |
20 中納言の君 | 名詞。中宮に仕える女房の名。 |
21 の |
格助詞の主格。意味は「~が」。 「の」の見分け方については、以下のページで詳しく解説をしていますので、よろしかったら、ご確認下さい。 |
22 御帳 | 名詞。寝殿造りの母屋の中に、床を一段高くし、四隅に柱を立てて四方に幕を垂らして天井に付けたもの。貴人の寝所や座所として用いた。読みは「みちょう」。 |
23 参らせ給ひ | サ行下二段動詞「参らす」の連用形+ハ行四段活用の補助動詞「給ふ」の連用形。意味は「差し上げなさる」。「参らせ」は「与ふ」の謙譲語。「給ひ」は尊敬語。「参らせ」は中宮に対する敬意。「給ひ」は中納言の君に対する敬意。 |
24 御火取 | 名詞。香炉のこと。 |
25 あまた | 名詞。意味は「たくさん」。 |
26 やがて | 副詞。意味は「すぐに」。 |
27 試みさせ給ひ | マ行上二段動詞「試む」の連用形+使役の助動詞「さす」の連用形+ハ行四段活用の補助動詞「給ふ」の連用形。意味は「試させなさる」。「給ひ」は尊敬語で、中宮に対する敬意。 |
28 さしのぞかせ給ひ | カ行四段動詞「さしのぞく」の未然形+尊敬の助動詞「す」の連用形+ハ行四段活用の補助動詞「給ふ」の連用形。意味は「のぞきなさる」。「せ給ひ」は二重尊敬で、中宮に対する敬意。 |
29 御座 | 名詞。貴人のいらっしゃる所のこと。読みは「おまし」。 |
30 かたはら臥させ給へり | サ行四段動詞「かたはら臥す」の未然形+尊敬の助動詞「す」の連用形+ハ行四段活用の補助動詞「給ふ」の已然形+存続の助動詞「り」の終止形。意味は「横になりなさっている」。「せ給へ」は二重尊敬で、中宮に対する敬意。 |
31 畳なはりたる | ラ行四段動詞「畳(たた)なはる」の連用形+存続の助動詞「たり」の連体形。意味は「重なり合っている」。 |
32 見えたる | ヤ行下二段動詞「見ゆ」の連用形+存続の助動詞「たり」の連体形。意味は「見えている」。 |
33 これかれ | 名詞。意味は「この人あの人」。 |
34 そこはかとなき | ク活用の形容詞「そこはかとなし」の連体形。意味は「とりとめのない」。 |
35 忍びやかに | ナリ活用の形容動詞「忍びやかなり」の連用形。 |
36 候ひ給ふ | ハ行四段動詞「候ふ」の連用形+ハ行四段活用の補助動詞「給ふ」の終止形。意味は「側にお控え差し上げなさる」。「候ひ」は「仕ふ」の謙譲語で、中宮に対する敬意。「給ふ」は尊敬語で、かれこれに対する敬意。 |
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現代語訳
春特有のものとして、中宮は外の雨をぼんやり眺めなさる昼時に、台盤所にいる女房たちが、「宰相中将様が参上なさったようだ。宰相中将様のいつもの御香りがはっきりと薫っています。」などと言っているうちに、宰相中将が膝をついて座りなさって、「昨夜から父の邸におりましたので、そのまま父の使いとして参りました。父は『東の対屋の庭の紅梅の下に中宮様がお埋めになった薫き物を、今日の手持ち無沙汰な時にお試しなさってください。」と申していたので、その薫り物をいただいて参上しました。」と申して、なんとも言いようがないほどすばらしい枝に、白銀の壺を二つつけなさっている。
中納言の君が、御帳の中へ差し上げなさって、香炉をたくさん用意して、中宮が若い女房たちにすぐに試させなさって、香炉を少しのぞきなさって、御帳のそばの御座所で横になりなさっている。紅梅の織物の御召し物に、重なり合っている御髪の裾だけが見えている状態で、女房のこの人やあの人が、とりとめのない物語をひそやかにして、しばらく側にお控え差し上げなさる。
中納言の君が、御帳の中へ差し上げなさって、香炉をたくさん用意して、中宮が若い女房たちにすぐに試させなさって、香炉を少しのぞきなさって、御帳のそばの御座所で横になりなさっている。紅梅の織物の御召し物に、重なり合っている御髪の裾だけが見えている状態で、女房のこの人やあの人が、とりとめのない物語をひそやかにして、しばらく側にお控え差し上げなさる。
いかがでしたでしょうか。
この箇所で重要な文法事項は以下の通りです。
・敬語表現がたくさん出てきますので、敬語表現の種類と誰に対する敬意かが分かるようにしておきましょう。
・「注10」と「注36」にある「候ひ」は、「注10」が丁寧語で、「注36」が謙譲語です。気をつけておきましょう。
・「注16」「注27」にある「させ」は、「注16」が尊敬の助動詞で、「注27」が使役の助動詞です。気をつけておきましょう。
続きは以下のリンクからどうぞ。
『堤中納言物語』「このついで」の現代語訳と重要な品詞の解説2
【七珍万宝作北尾政美画『海中箱入娘』(天明八年刊)を参考に挿入画を作成】