『源氏物語』「若紫との出会い」の現代語訳と重要な品詞の解説1

お断り:この記事には、最初に倉橋先生とゆかいな仲間たちの戯れがあります。お急ぎの方は、上にある目次の見たい項目をクリックすると、その解説に飛びますので、そちらをご利用ください。なお、解説は真面目にしております。
  
  
  
  
  
かわいいなあ♪♪♪
  
  
  
  
  
あれ?
お隣の権兵衛さん、
あんな所からのぞいて、
何してるんだ?
  
  
  
  
  
  
鞠をついている姿も、
最高にかわいい♪♪♪
  
  
  
  
  
権兵衛さん、こんにちは。
こんな所で
何しているんですか?
  
  
  
  
  
わっ!
倉橋先生!!
驚かさないで下さいよ。
  
  
  
  
  
すいません。
つい、気になってしまい…。
御取組み中なら、
失礼致します。
  
  
  
待って下さい。
あの、鞠をついている子
かわいくありません?
  
  
  
  
  
確かに、かわいいですね。
まだ幼いですけどね。
  
  
  
  
  
でしょ♪でしょ♪
私、目つけてんですよー♪
将来は、女子アナか、
日向坂かなあ?
  
  
  
  
楽しそうですね(笑)。
じゃあ、私、帰りますね。
  
  
  
  
  
待って下さい。
確か、『源氏物語』に
のぞく話、ありましたよね?
  
  
  
  
のぞく話??
「若紫」のことですか?
  
  
  
  
  
それです♪♪♪♪♪
のぞいて、可愛い女の子
引き取る話♪♪♪♪
今してくれません?
  
  
  
今??
権兵衛さんが、何でそんなに
興奮してるか分からない
ですが、ご所望なら
講義、致しましょう。
  
  
  

本文

 日もいと長きに、つれづれなれ【注1】ば、夕暮れ【注2】いたう【注3】霞みたる【注4】に紛れて、かの小柴垣【注5】のもとに立ち出で給ふ【注6】。人々は帰し給ひ【注7】て、惟光【注8】の朝臣とのぞき給へ【注9】ば、ただこの西面【注10】にしも、持仏【注11】据ゑ奉り【注12】行ふ【注13】なりけり【注14】。簾少し上げて、花奉るめり【注15】。中の柱に寄りゐ【注16】て、脇息【注17】の上に経を置きて、いとなやましげに【注18】読みゐたる【注19】尼君、ただ人と見えず【注20】。四十余ばかりにて【注21】、いと白う【注22】あてに【注23】痩せたれ【注24】ど、つらつき【注25】ふくらかに【注26】、まみのほど、髪【注27】うつくしげに【注28】そがれたる【注29】末も、なかなか【注30】長きよりも、こよなう【注31】今めかしき【注32】ものかな【注33】と、あはれに【注34】見給ふ【注35】

重要な品詞と語句の解説

語句【注】 品詞と意味
1 つれづれなれ ナリ活用の形容動詞「つれづれなり」の已然形。意味は「退屈だ」。
2 の 格助詞の同格。意味は「~で」。

「の」の見分け方については、以下のページで詳しく解説をしていますので、よろしかったら、ご確認下さい。

助詞「の」の識別の解説

3 いたう ク活用の形容詞「いたし」の連用形。意味は「ひどく」。「いた」は「いた」がウ音便化している。
4 霞みたる マ行四段動詞「霞む」の連用形+存続の助動詞「たり」の連体形。意味は「霞んでいる」。
5 小柴垣 名詞。木の細い枝で作った丈の低い垣のこと。
6 立ち出で給ふ ダ行下二段動詞「立ち出づ」の連用形+ハ行四段活用の補助動詞「給ふ」の終止形。意味は「立ちお出掛けになる」。「給ふ」は尊敬語で、光源氏に対する敬意。
7 帰し給ひ サ行四段動詞「帰す」の連用形+ハ行四段活用の補助動詞「給ふ」の連用形。意味は「帰しなさる」。「給ひ」は尊敬語で、光源氏に対する敬意。
8 惟光 名詞。光源氏の乳母子で、親しい家臣。
9 のぞき給へ カ行四段動詞「のぞく」の連用形+ハ行四段活用の補助動詞「給ふ」の已然形。意味は「のぞきなさる」。「給へ」は尊敬語で、光源氏に対する敬意。
10 西面 名詞。西に向いた部屋のこと。
11 持仏 名詞。部屋に置いたりして常に信仰する仏像のこと。
12 据ゑ奉り ワ行下二段動詞「据う」の連用形+ラ行四段活用の補助動詞「奉る」の連用形。意味は「据え差し上げる」。「奉り」は謙譲語で、持仏に対する敬意。
13 行ふ ハ行四段動詞「行ふ」の連体形。意味は「仏道修行する」。
14 なりけり 断定の助動詞「なり」の連用形+詠嘆の助動詞「けり」の終止形。意味は「~であった」。
15 奉るめり ラ行四段動詞「奉る」の終止形+推定の助動詞「めり」の終止形。意味は「差し上げるようだ」。「奉る」は謙譲語で、持仏に対する敬意。
16 寄りゐ ワ行上一段動詞「寄りゐる」の連用形。意味は「寄りかかって座っている」。
17 脇息 名詞。意味は「肘掛け」。読みは「きょうそく」。
18 なやましげに ナリ活用の形容動詞「なやましげなり」の連用形。意味は「気分が悪く苦しそう」。
19 読みゐたる ワ行上一段動詞「読みゐる」の連用形+存続の助動詞「たり」の連体形。意味は「座って読んでいる」。
20 見えず ヤ行下二段動詞「見ゆ」の未然形+打消の助動詞「ず」の終止形。意味は「見えない」。
21 にて 断定の助動詞「なり」の連用形+接続助詞「て」。

「にて」の見分け方については、以下のページで詳しく解説をしていますので、よろしかったら、ご確認下さい。

「にて」の識別の解説

22 白う ク活用の形容詞「白し」の連用形。「白」は「白」がウ音便化している。
23 あてに ナリ活用の形容動詞「あてなり」の連用形。意味は「上品だ」。
24 痩せたれ サ行下二段動詞「痩す」の連用形+存続の助動詞「たり」の已然形。意味は「痩せている」。
25 つらつき 名詞。意味は「顔つき」。
26 ふくらかに ナリ活用の形容動詞「ふくらかなり」の連用形。
27 の 格助詞の主格。意味は「~が」。
28 うつくしげに ナリ活用の形容動詞「うつくしげなり」の連用形。
29 そがれたる ガ行四段動詞「そぐ」の未然形+受身の助動詞「る」の連用形+存続の助動詞「たり」の連体形。意味は「毛先をそろえられている」。
30 なかなか 副詞。意味は「かえって」。
31 こよなう ク活用の形容詞「こよなし」の連用形。意味は「この上ない」。「こよな」は「こよな」がウ音便化している。
32 今めかしき シク活用の形容詞「今めかし」の連体形。意味は「現代風ではなやかだ」。
33 かな 詠嘆の終助詞。意味は「~だなあ」。
34 あはれに ナリ活用の形容動詞「あはれなり」の連用形。意味は「しみじみと」。
35 見給ふ マ行上一段動詞「見る」の連用形+ハ行四段活用の補助動詞「給ふ」の終止形。意味は「御覧になる」。「給ふ」は尊敬語で、光源氏に対する敬意。

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現代語訳

 日もとても長い上に、退屈であるので、夕暮れでひどく霞んでいるのに紛れて、(光源氏は)あの小柴垣の所へ立ちお出掛けになる。(光源氏は)お供の者を帰しなさって、惟光の朝臣とのぞきなさると、ちょうど西に向いた部屋に、持仏を据え差し上げて仏道修行している尼君がいたのであった。簾を少し上げて、仏に花を差し上げているようだ。部屋の中柱に寄りかかって座って、肘掛けの上に経文を置いて、たいそう気分が悪く苦しそうに読んで座っている尼君は、普通の身分の人とは見えない。四十歳ぐらいで、たいそう色白で上品で、痩せているけれど、顔つきがふっくらとして、目もとのあたりや、髪が毛先がそろえられいる末も、かえって長い髪よりも、この上なく現代風ではなやかなものだなあと思って、(光源氏は)しみじみと御覧になる。
  

  

いかがでしたでしょうか。

この箇所で特に重要な文法事項は次の通りです。

  
  

・敬語表現は誰に対する敬意か分かるようにしておきましょう。
→注6・7・9・35は光源氏、注12・15は持仏に対する敬意。

・主語が誰か分かるようにしておきましょう。

  

続きは以下のリンクからどうぞ。

『源氏物語』「若紫との出会い」の現代語訳と重要な品詞の解説2

  

【鈴木春信画「かぎやおせん」・通笑門人道笑作北尾重政画『ほへとたんか』(天明元年刊)を参考に挿入画を作成】

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