『十八史略』「臥薪嘗胆」の書き下しと和訳と重要表現の解説3

  

では、「臥薪嘗胆」の前回の続きの文章を見ていきましょう。

前回の解説はこちら。

  

『十八史略』「臥薪嘗胆」の書き下しと和訳と重要表現の解説2

  
  

「臥薪嘗胆」本文

 
 
 

「臥薪嘗胆」書き下し文

※カギカッコの中のひらがなは現代仮名遣いの読み仮名です。色が付いている箇所は漢字をひらがなで書き下す箇所です。

⑲夫差(ふさ)、乃(すなわ)ち子胥(ししょ)に属鏤(しょくい)剣を賜(たま)ふ。
⑳子胥其の家人に告げて曰はく、
㉑「必ず吾が墓に檟(か)を樹(う)ゑよ。
㉒檟は材(ざい)とすべきなり
㉓吾が目を抉(えぐ)りて東門に懸けよ。
㉔以(もっ)て越兵(えつへい)呉を滅ぼすを観(み)ん。」と。
㉕乃(すなわ)ち自剄(じけい)す。
㉖夫差其の尸(し)を取り、盛(も)るに鴟夷(しい)を以てし之を江に投(とう)ず。
㉗呉人之を憐(あわ)れみ、祠(ほこら)を江上に立て、命(な)づけて胥山(しょざん)と曰(い)ふ。
㉘越、十年生聚(せいしゅう)し、十年教訓す。
㉙周の元王(げんおう)の四年、越 呉を伐(う)つ。
㉚呉三たび戦ひ三たび北(に)ぐ。
㉛夫差姑蘇(こそ)に上り、亦(ま)た成(たいら)ぎを越に請(こ)ふ。
㉜范蠡(はんれい)可(き)かず。
㉝夫差曰はく、「吾(われ)以て子胥を見る無し。」と。
㉞幎冒(べきぼう)を為(つく)りて乃ち死せり。

 

語釈

語句 品詞と意味
⑲の文章  
 夫差 名詞。呉王。闔廬の子。
 乃 副詞。意味は「そこで」。
 賜 動詞。読みは「たま(ふ)」。意味は「お与えになる」。
 子胥 名詞。春秋時代の楚の武人で、呉に仕える。
 属鏤之剣 名詞。読みは「しょくいのけん」。「之」は、助詞で、意味は「~の」。名剣の名前。夫差はこの剣を子胥に与えて、自殺しろと命じた。
⑳の文章   
 家人 名詞。家族のこと。
㉑の文章   
 樹ヱヨ 動詞。読みは「う(えよ)」。意味は「植えろ」。
 檟 名詞。読みは「か」。ひさぎの木のこと。古代、棺を作る材料とした。
㉒の文章   
 可 適当の助動詞。読みは「べ(き)」。意味は「~するがよい」。
 材 名詞。意味は「材料」。ここでは、夫差の棺の材料を意味する。
 也 断定の助動詞。読みは「なり」。意味は「~である」。
㉓の文章   
 抉 動詞。読みは「えぐ(り)」。意味は「えぐる」。
 東門 名詞。呉の都の東の門。呉は越の西側にあり、越が呉を攻める際は、東門から攻撃する。
㉔の文章   
 以 接続詞。読みは「もっ(て)」。意味は「そして」。
 之 助詞。読みは「の」。意味は「~が」。
㉕の文章   
 自剄 動詞。読みは「じけい(す)」。意味は「首を切って自殺する」。
㉖の文章   
 尸 名詞。読みは「し」。意味は「しかばね・死骸」。
 盛 動詞。読みは「も(る)」。意味は「物を容器にいっぱいにする」。
 以 動詞。意味は「~を使って」。
 鴟夷 名詞。読みは「しい」。馬の皮で作った袋のこと。
 江 名詞。長江のこと。
㉗の文章   
 命ヅケ 動詞。読みは「な(づけ)」。意味は「名づける」。
㉘の文章   
 生聚 名詞。読みは「せいしゅう」。人民を増やし、物資を豊かにすること。
㉙の文章   
 元王四年 連語。紀元前472年のこと。
 伐 動詞。読みは「う(つ)」。意味は「攻める」。
㉚の文章   
 北 動詞。読みは「に(ぐ)」。意味は「敗北して逃げる」。
㉛の文章   
 姑蘇 名詞。読みは「こそ」。姑蘇山のこと。
 亦 接続詞。読みは「ま(た)」。意味は「また」。
 成 名詞。読みは「たいら(ぎ)」。意味は「和睦」。
 於 置き字。読まない、書き下さない。
㉜の文章   
 范蠡 名詞。春秋時代の越の政治家・武人。
 不 助動詞。読みは「ず」。意味は「~ない」。
 可 動詞。読みは「き(か)」。意味は「聞き入れる」。
㉝の文章   
 吾 名詞。読みは「われ」。
㉞の文章   
 為 動詞。読みは「つく(り)」。意味は「つくる・こしらえる」。
 幎冒 名詞。読みは「べきぼう」。死者の顔を覆う布のこと。

「臥薪嘗胆」和訳・現代語訳

⑲夫差は、そこで子胥に属鏤という名剣を与えなさった(そして、自害せよと暗に命じた)。
⑳子胥は、自分の家族に告げて言うことには、
㉑「必ず自分の墓に檟の木を植えよ。
㉒檟を(夫差の)棺桶の材料にしてやるのがよい。
㉓(次に)わしの目玉をえぐり取って、呉の都の東の門にかけろ。
㉔そして、越の兵が(東の門から攻め込んで、)呉の国を滅ぼすのを見てやろう。」と。㉕そこで、(子胥は、)自ら首をはねて死んだ。
㉖夫差は(この言葉を聞いて大いに怒り)子胥の死骸を掘り起こさせ、馬の皮で作った袋の中にいっぱいつめ込み、長江に投げ捨てた。
㉗呉の国の人々は、子胥を哀れみ、ほこらを長江のほとりに立てて、そこを胥山と名付けた。(そして、弔った。)
㉘越は、十年間人民を増やし、物資を豊かにし、(次の)十年間は、教育と軍事訓練をした。
㉙周の元王の四年、(ついに)越は呉を攻めた。
㉚呉は三度戦い、三度敗北に敗走した。
㉛夫差は姑蘇山に上り、(以前句践が会稽山でやったように)和睦を越に申し出た。
㉜句践の家臣の范蠡は聞き入れなかった。
㉝夫差は(死の間際に)言った。「わしは、(あの世で)子胥に合わせる顔がない。」と。
㉞死者の顔を覆う布をこしらえ、それで顔を覆って自殺した。

漢文「臥薪嘗胆」の重要事項 

 
 
いかがでしたでしょうか。
最後にこの文章での
重要な所は次の通りです。
 
 
 

・㉒の「可」と㉜の「可」は品詞が違いますので、違いが分かるようにしておきましょう。
(㉒の「可」→助動詞、㉜の「可」→動詞)

・㉔と㉝の文章は返り点が付けられるようにしておきましょう。

・⑲、㉔、㉖、㉗の「之」が見分けられるようにしておきましょう。

  

  

ありがとうございました。
戦争では情けをかけては
いけないんですね。

  
  

  

そうですね。
政治判断は時には
残酷なものですね。

  
  
   そう考えると、私が
ねずみを捕えて
食べるのも、
政治判断ですよ。
  
  

  

それはちょっと、
違うような…。

  

  

まあ、いいでしょう。
ここで議論する時間は
ありませんので。私、
配達の途中なんです。

  
  
  

配達の途中って、
まさか…。
隣にバックがある
ということは…。

  

  

乳母(うば)イーツです。
これから、ねずみを
届けにいくんです。
ちょっと食べちゃいましたけど

  
  

  

でた!乳母イーツ!!
しかも、つまみ食い
してる!!!

  
  

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