では、「臥薪嘗胆」の前回の続きの文章を見ていきましょう。
前回の解説はこちら。
「臥薪嘗胆」本文
「臥薪嘗胆」書き下し文
※カギカッコの中のひらがなは現代仮名遣いの読み仮名です。色が付いている箇所は漢字をひらがなで書き下す箇所です。
⑲夫差(ふさ)、乃(すなわ)ち子胥(ししょ)に属鏤(しょくい)の剣を賜(たま)ふ。
⑳子胥其の家人に告げて曰はく、
㉑「必ず吾が墓に檟(か)を樹(う)ゑよ。
㉒檟は材(ざい)とすべきなり。
㉓吾が目を抉(えぐ)りて東門に懸けよ。
㉔以(もっ)て越兵(えつへい)の呉を滅ぼすを観(み)ん。」と。
㉕乃(すなわ)ち自剄(じけい)す。
㉖夫差其の尸(し)を取り、盛(も)るに鴟夷(しい)を以てし之を江に投(とう)ず。
㉗呉人之を憐(あわ)れみ、祠(ほこら)を江上に立て、命(な)づけて胥山(しょざん)と曰(い)ふ。
㉘越、十年生聚(せいしゅう)し、十年教訓す。
㉙周の元王(げんおう)の四年、越 呉を伐(う)つ。
㉚呉三たび戦ひ三たび北(に)ぐ。
㉛夫差姑蘇(こそ)に上り、亦(ま)た成(たいら)ぎを越に請(こ)ふ。
㉜范蠡(はんれい)可(き)かず。
㉝夫差曰はく、「吾(われ)以て子胥を見る無し。」と。
㉞幎冒(べきぼう)を為(つく)りて乃ち死せり。
語釈
語句 | 品詞と意味 |
⑲の文章 | |
夫差 | 名詞。呉王。闔廬の子。 |
乃チ | 副詞。意味は「そこで」。 |
賜フ | 動詞。読みは「たま(ふ)」。意味は「お与えになる」。 |
子胥 | 名詞。春秋時代の楚の武人で、呉に仕える。 |
属鏤之剣 | 名詞。読みは「しょくいのけん」。「之」は、助詞で、意味は「~の」。名剣の名前。夫差はこの剣を子胥に与えて、自殺しろと命じた。 |
⑳の文章 | |
家人 | 名詞。家族のこと。 |
㉑の文章 | |
樹ヱヨ | 動詞。読みは「う(えよ)」。意味は「植えろ」。 |
檟 | 名詞。読みは「か」。ひさぎの木のこと。古代、棺を作る材料とした。 |
㉒の文章 | |
可キ | 適当の助動詞。読みは「べ(き)」。意味は「~するがよい」。 |
材 | 名詞。意味は「材料」。ここでは、夫差の棺の材料を意味する。 |
也 | 断定の助動詞。読みは「なり」。意味は「~である」。 |
㉓の文章 | |
抉リ | 動詞。読みは「えぐ(り)」。意味は「えぐる」。 |
東門 | 名詞。呉の都の東の門。呉は越の西側にあり、越が呉を攻める際は、東門から攻撃する。 |
㉔の文章 | |
以テ | 接続詞。読みは「もっ(て)」。意味は「そして」。 |
之 | 助詞。読みは「の」。意味は「~が」。 |
㉕の文章 | |
自剄ス | 動詞。読みは「じけい(す)」。意味は「首を切って自殺する」。 |
㉖の文章 | |
尸 | 名詞。読みは「し」。意味は「しかばね・死骸」。 |
盛ル | 動詞。読みは「も(る)」。意味は「物を容器にいっぱいにする」。 |
以テ | 動詞。意味は「~を使って」。 |
鴟夷 | 名詞。読みは「しい」。馬の皮で作った袋のこと。 |
江 | 名詞。長江のこと。 |
㉗の文章 | |
命ヅケ | 動詞。読みは「な(づけ)」。意味は「名づける」。 |
㉘の文章 | |
生聚 | 名詞。読みは「せいしゅう」。人民を増やし、物資を豊かにすること。 |
㉙の文章 | |
元王ノ四年 | 連語。紀元前472年のこと。 |
伐ツ | 動詞。読みは「う(つ)」。意味は「攻める」。 |
㉚の文章 | |
北グ | 動詞。読みは「に(ぐ)」。意味は「敗北して逃げる」。 |
㉛の文章 | |
姑蘇 | 名詞。読みは「こそ」。姑蘇山のこと。 |
亦タ | 接続詞。読みは「ま(た)」。意味は「また」。 |
成ギ | 名詞。読みは「たいら(ぎ)」。意味は「和睦」。 |
於 | 置き字。読まない、書き下さない。 |
㉜の文章 | |
范蠡 | 名詞。春秋時代の越の政治家・武人。 |
不 | 助動詞。読みは「ず」。意味は「~ない」。 |
可カ | 動詞。読みは「き(か)」。意味は「聞き入れる」。 |
㉝の文章 | |
吾 | 名詞。読みは「われ」。 |
㉞の文章 | |
為リ | 動詞。読みは「つく(り)」。意味は「つくる・こしらえる」。 |
幎冒 | 名詞。読みは「べきぼう」。死者の顔を覆う布のこと。 |
「臥薪嘗胆」和訳・現代語訳
⑲夫差は、そこで子胥に属鏤という名剣を与えなさった(そして、自害せよと暗に命じた)。
⑳子胥は、自分の家族に告げて言うことには、
㉑「必ず自分の墓に檟の木を植えよ。
㉒檟を(夫差の)棺桶の材料にしてやるのがよい。
㉓(次に)わしの目玉をえぐり取って、呉の都の東の門にかけろ。
㉔そして、越の兵が(東の門から攻め込んで、)呉の国を滅ぼすのを見てやろう。」と。㉕そこで、(子胥は、)自ら首をはねて死んだ。
㉖夫差は(この言葉を聞いて大いに怒り)子胥の死骸を掘り起こさせ、馬の皮で作った袋の中にいっぱいつめ込み、長江に投げ捨てた。
㉗呉の国の人々は、子胥を哀れみ、ほこらを長江のほとりに立てて、そこを胥山と名付けた。(そして、弔った。)
㉘越は、十年間人民を増やし、物資を豊かにし、(次の)十年間は、教育と軍事訓練をした。
㉙周の元王の四年、(ついに)越は呉を攻めた。
㉚呉は三度戦い、三度敗北に敗走した。
㉛夫差は姑蘇山に上り、(以前句践が会稽山でやったように)和睦を越に申し出た。
㉜句践の家臣の范蠡は聞き入れなかった。
㉝夫差は(死の間際に)言った。「わしは、(あの世で)子胥に合わせる顔がない。」と。
㉞死者の顔を覆う布をこしらえ、それで顔を覆って自殺した。
漢文「臥薪嘗胆」の重要事項
・㉒の「可」と㉜の「可」は品詞が違いますので、違いが分かるようにしておきましょう。
(㉒の「可」→助動詞、㉜の「可」→動詞)
・㉔と㉝の文章は返り点が付けられるようにしておきましょう。
・⑲、㉔、㉖、㉗の「之」が見分けられるようにしておきましょう。
ありがとうございました。
戦争では情けをかけては
いけないんですね。
そうですね。
政治判断は時には
残酷なものですね。
ねずみを捕えて
政治判断ですよ。
それはちょっと、
違うような…。
まあ、いいでしょう。
ここで議論する時間は
ありませんので。私、
配達の途中なんです。
配達の途中って、
まさか…。
隣にバックがある
ということは…。
乳母(うば)イーツです。
これから、ねずみを
届けにいくんです。
ちょっと食べちゃいましたけど
でた!乳母イーツ!!
しかも、つまみ食い
してる!!!