入試問題に挑戦!
では、係り結びの法則と
結びの省略の入試問題を
やってみましょう。
練習問題1
「さても今朝出で給ひし御ありさまこそ、世の常ならず見え A 」
(『あきぎり』)
問 空欄 A に入る語句として適当なものを、次のうちから一つ選べ。
ア 給はじ イ 給ひし ウ 給へしか エ 給ひき オ 給ひしか
(同志社大学 2011年)
練習問題1の解説
ます、問題文の中から係助詞を探します。
「こそ」がありますので、文末は已然形になります。
次に選択肢の中で、文末が已然形になっているものを探します。
ア(打消意志の助動詞「じ」の已然形)と、ウ・オ(過去の助動詞「き」の已然形)の3つに絞られます。
確認のため、活用表を下に載せておきます。
上の表を使って確認しますと、選択肢のイは、過去の助動詞「き」の連体形、エは、過去の助動詞「き」の終止形です。
次に、本文を訳してみて、アの打消意志の助動詞が良いのか、ウ・オの過去の助動詞が良いのかを判断します。空欄Aより前の訳はこんな感じ。
「それにしても、今朝お出でなさった御姿は、世間並みでないように…」
「…」の部分が空欄箇所の訳になるのですが、「お見えになるまい」が良いのか、「お見えになりました」が良いのかで判断すると、アの「お見えになるまい」は不適当だと判断できます。
ウとオの二択になりましたが、ウの「給へ」とオの「給ひ」のどちらが正しいのでしょうか?
実はウの「給へ」は謙譲語の補助動詞で、オの「給ひ」は尊敬語の補助動詞です。
漢字は同じですが、活用形が異なります。活用表は以下の通りです。
今回は、訳してみて尊敬語の方が適当なので、答えはオになります。
練習問題1の正解:オ「給ひしか」
現代語訳:「それにしても、今朝お出でなさった御姿は、世間並みでないようにお見えになりました」
大学入試の選択問題の裏技として、いきなり一つに絞られる選択肢は正解になりにくいという暗黙のルールがあります。
今回で言うと、アは打消意志の助動詞「じ」で、それ以外の4つが過去の助動詞「き」であり、ウは「給へ」で、イ・エ・オは「給ひ」となっており、絶対ではありませんが、選択肢が多い方に正解が混じっていることがほとんどです。
(大学入試の問題は複数の教員が入試会議をして作成しますので、奇をてらうことはあまりしません)
本番で、迷ったら、選択肢が多い方にかけてみるのも手の一つだと思います。
もう一つ、練習問題をやってみましょう。次は結びの省略の問題です。
練習問題2
世の過ぎがたさに、人の門にたたずみて袖をひろぐるわざをし侍るにこそとうち思ひて、
(『撰集抄』)
傍線部の係助詞「こそ」は結びが省略されている。補うべき語句として最も適切なものを、次の中から一つ選べ。
ア あらめ イ あはれめ ウ つつめ エ ながめ オ ならめ
(東海大学 2012年)
練習問題2の解説
今回は、文末がすべて「め」(推量の助動詞「む」の已然形)になっていますので、訳してみてどの選択肢が良いのか判断します。
現代語訳は以下の通り。
現代語訳:世の中(生活)の生きづらさために、人の家の門の前でたたずんで、袖を広げて物乞いをするためにいるのでしょうとふと考えて、
結びの省略は文脈上、類推できる言葉を省略しますので、基本的に想像できる簡単な言葉が入ります。
今回で言うと、現代語訳の傍線部の「いるのでしょう」がそれに当たりますので、答えは、ラ変動詞「あり」の未然形+推量の助動詞「む」の已然形の「ア あらめ」になります。
練習問題2の正解:ア あらめ
いかがでしたでしょうか?
係り結びの法則は空欄問題か、省略された語を補う問題が大学入試では出題されますので、文末の活用形が分かることと、文脈から省略された語を連想できることの二点をきちんと身につけておきましょう。
【唐来参和作『大千世界牆の外』(天明四年刊)を参考に挿入画を作成】