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入試でよく出る識別の最有力候補
こんにちは。
今回は「なむ」の識別について、お話しします。
文法書や参考書などを見ていると、色々な識別が載っていますが、
「なむ」の識別だけは気合いを入れて覚えた方がいいです。
というもの、大学入試で本当によく出る識別だからです。
試しに私の手元にある過去問のファイルを見たところ、出ますわ出ますわ。
こんな感じ。
かく心苦しくて住まむよりは、都にては、とてもかくても過ぎなむ」とて
(沙石集)
問 傍線「なむ」の文法的説明として正しいものを、次の選択肢から一つ選べ。
ア 強意の係助詞
イ 推量の助動詞
ウ 他への願望の終助詞
エ 強意の助動詞+推量の助動詞
オ 打消の助動詞+勧誘の助動詞 (駒澤大学 2009年)
「何ごとものどかになむ」など申させたまふ。
(栄花物語)
問 傍線「なむ」と同じ働きをしているものを、次の選択肢から一つ選べ。
ア おしなべて峰も平らになりななむ
イ あるじの親王、酔ひて入りたまひなむとす
ウ 駿河の国にあるなる山なむ、この都も近く、天も近くはべる
エ いづちもいづちも、足の向きたらむ方へいなむず
オ 少し秋風吹き立ちなむ時、かならずあはむ (駒澤大学 2005年)
両方とも駒澤大学なのは、昔教えた門下生がこの大学に
行きたかったからです。
ちなみに2012年にも「なむ」の問題が出ています。
(後で練習問題でお見せします)
一つの大学だけで、3回も出題されているということからも、「なむ」の識別がいかに大事
かが分かりますよね。
では、見分け方をきちんと勉強しましょう。
ちょっと待ったー
誰?
ご飯中失礼します。
さっきの問題の答えが
気になりまして先に答えを
教えてくれませんか?
私はご飯を食べてませんが…。
仕方ありませんね。
問題1の答えがエ。
問題2の答えがウです。
ありがとうございます。
食事の途中だったので、
これにて失礼。
行ってしまった。
結局誰だか分からず…。
まあ、いいでしょう。
では、詳しく解説しましょう。
「なむ」の種類の解説(全4種類)
「なむ」の種類は全部で4種類です。重要度は星の色の数で表示しています。
①強意(確述)の助動詞「ぬ」の未然形の「な」+推量または意志の助動詞「む」の終止形・連体形 ★★★★★
②願望の終助詞の「なむ」 ★★★★☆
③強意の係助詞の「なむ」 ★★★☆☆
④ナ変動詞「死ぬ」・「往ぬ」の未然形「死な」・「往な」+推量あるいは意志の助動詞
「む」終止形・連体形 ★★☆☆☆
詳しい解説をします。
①強意(確述)の助動詞「ぬ」の未然形の「な」+推量または意志の助動詞「む」の終止形・連体形の解説
①の「なむ」は助動詞が二個くっ付いたもので、「なむ」の前の動詞が連用形になります。
動詞の連用形+なむ
「む」が推量の場合は、「きっと~だろう」と訳し、「む」が意志の場合は、「(きっと)~しよう」と訳します。
先ほど挙げた入試問題を例に見て見ましょう。
強意の助動詞の「ぬ」は、上に来る動詞の接続が連用形になりますので、そこで見分けます。という訳で、問題1の答えは「エ 強意の助動詞+推量の助動詞」になります。
もう二つ例を見て見ましょう。
最後の「む」は推量の時と意志の時がありますので、注意が必要です。
②願望の終助詞の「なむ」の解説
②の「なむ」は願望の終助詞(文末にくる助詞)で、「なむ」の前の動詞や助動詞が未然形になります。
動詞・助動詞の未然形+なむ
「~してほしい」と訳します。
先ほど挙げた入試問題を例に見て見ましょう。
③強意の係助詞の「なむ」の解説
③の「なむ」は係助詞で、この「なむ」があることにより文末の述語(動詞・形容詞・助動詞)が連体形になります。(係り結びの法則)
係助詞の「なむ」
係助詞の強意は、特に訳す必要はありません。
先ほど挙げた入試問題を例に見て見ましょう。
係助詞の「なむ」は「なむ」の4種類の中で、一番判断しやすいものでありますが、一つだけ注意点があります。
それは、係り結びの法則の結びの部分が省略されることです。(結びの省略)
例を見て見ましょう。先ほど挙げた問題2の入試問題です。
係り結びの省略については、以下のページで詳しく解説をしていますので、よろしかったら、ご確認下さい。
④ナ変動詞「死ぬ」・「往ぬ」の未然形「死な」・「往な」+推量あるいは意志の助動詞「む」終止形・連体形の解説
④の「なむ」は、「な」がナ行変格活用動詞の語尾で、その後ろに助動詞の「む」がくっ付いたものです。
死なむ・往な む
「む」が意志の場合は、「死のう」、「行こう」と訳し、「む」が推量の場合は、「死ぬだろう」、「行くだろう」と訳します。
先ほど挙げた入試問題を例に見て見ましょう。
※助動詞の「むず」は助動詞の「む」と同じです。
まとめ
最後にポイントです。
○4種類のうちで、最初に覚えるべきものは、
入試問題で圧倒的に出題されている①の強意(確述)の助動詞「ぬ」の未然形の「な」+推量または意志の助動詞「む」の終止形・連体形です。
①が入試問題で出題される理由は、2つあります。
ⅰ 助動詞が2個くっ付いていて、受験生の古典の知識のレベルを確認できるから。
ⅱ ②の願望の終助詞の「なむ」と見分けるために、直前の言葉の活用形を確認しなければならないから。
①は最優先で見分けられるようにしておきましょう。
上で説明した見分け方をきちんと覚え、本番でできるようにしましょう。
最後に確認用の練習問題を用意しました。
【市場通笑作・鳥居清長画『近頃嶋めぐり』(安永九年刊)を参考に挿入画を作成】