法政大学の漢文の入試問題の解説(2017年)

お断り:この記事には、最初に倉橋先生とゆかいな仲間たちの戯れがあります。お急ぎの方は、上にある目次の見たい項目をクリックすると、その解説に飛びますので、そちらをご利用ください。なお、解説は真面目にしております。

今回は、法政大学文学部の2017年の漢文の問題を学習しましょう。

こんにちは。倉橋先生。
今日は漢文の講義をするんですか?

私、漢文は苦手で…。

えっ、うさぎさん、漢文が苦手なんですか?

法政大学のマスコットなのに、だめですよー。
受験科目にありますよー。

えっと、まず、私、法政大学のマスコットの「えこぴょん」じゃありません。前にも言いましたよね?

漢文は肌に合わないんですよー。昔から言うでしょ。
うさぎに祭文(さいもん)」って。

ありがたいことを聞かせても、意味がなく無駄」という意味のことわざですよね。
でも、「祭文」と「漢文」ではだいぶ違う感じがしますが…。

(※「祭文」とは、祭りの時に、独特の節をつけて神仏に告げる言葉のことです。)

いえいえ、似てますよ。
一文字違いだけなんだから、ほぼ親戚みたいなもんですよ。

そんなこと言ったら、「文」が付いている言葉は、みんな親戚になってしまいますよ。
「古文」とか、「天文」とか、「作文」とか。

うるさいなー。細かいこと気にしすぎですよ。

さっさと講義始めてください。待ってるんですから。

聞くのかい。

では、解説を始めます。

漢文は縦書きですので、本文を前半と後半に分けて表示します。

今回は前半の問題の解説をします。

過去問に挑戦!

前半の本文

前半の注 孔融―人名。後漢の人。
京師―みやこ。
河南尹―河南の長官。河南は行政区域名。
李膺―人名。後漢の政治家・学者。
高明―立派なかたという意味で、相手に対する尊称。
周旋―かかわる。関係する。

前半の設問

(設問は前半の部分のものを載せています。そのため、実際の設問の順序と異なります。)

問一 傍線①「当取小者」をひらがなのみの書き下し文にせよ。

問二 波線A「為人」・B「然」の読み方を、送り仮名も含めて平仮名で答えよ。

前半の解説

では、問一の書き下しの問題から見ていきましょう。
まずこの問題は、再読文字「当」を知っているかを問うているものと言えます。「当」は「当(まさ)に~べし」と書き下し、意味は「~すべきだ・きっと~のはずだ」になります。
傍線①の四文字(当取小者)のうち、最初の文字「当」は再読文字ということが分かりましたので、次に動詞を探します。残りの三文字のうち、動詞になりそうな文字は「取」の字であるということがすぐ分かると思います。「小者」は傍線①の少し前に同じ言葉(輒ち小なる者を引く)が出てきてますので、動詞ではなく目的語であることが分かります。あとは、すべてひらがなで読むだけです。

問一の正解:まさにせうなるものをとるべし。

次に、問二の読みの問題ですが、波線Bは漢文でよく出てくる表現なので、解けなくはない問題ですが、波線Aはかなり難しい問題となっています。
波線Aは「生れつき、性質、さが」といった意味で、「ひととなり」と読みます。
波線Bは「そのとおりである」といった意味で、「しかり」と読みます。

問二の正解:A ひととなり  B しかり

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前半の書き下し文

孔融字は文挙、魯国の人、孔子二十四世の孫なり。融四歳のとき、兄と梨を食らふに、輒ち小なる者を引く。人其の故を問ふ。答へて曰はく、小児、法当に小なる者を取るべし。年十歳のとき、父に随ひて京師に詣る。河南の尹李膺重名有り、融其の人と為りを観んと、遂に之に造る。膺問ふ、高明の父祖、嘗て僕と周旋せしやと。融曰はく、然り。

前半の和訳

孔融は、字が文挙、魯の国の人で、孔子二十四世の孫である。孔融が四歳の時、兄と梨を食べるのに、そのたびごとに小さいほうを取った。ある人がその理由を孔融に尋ねた。孔融は答えて言った。「小さい者は、きまりとして小さいほうを取るべきなのです。」と。孔融が十歳の時、父に随って、都に上った。河南の長官の李膺は高名があって、孔融は李膺の性質を観たいと思い、とうとう彼の所に行った。李膺が尋ねた。「立派で優れているあなたの御先祖はこれまで私とかかわりがありましたか。」と。孔融は言った。「そうです。

いかがでしたでしょうか。

問一の書き下し文の問題は、漢文の構造(英語と同じで、主語+副詞(助動詞)+動詞+目的語(補語)」が分かっていれば、難しくない内容となっています(再読文字は一回目は副詞として読み、二回目は助動詞として読みます)。
問二は、波線A「為人」が、「ひととなり」という決まった言い方の言葉ですので、知っているかいないかの差になっていますが、波線Bは普段から漢文を読んでいると、分かる問題ですので、Bは出来た方がよいでしょう。

本文の後半と問題は、別のページで掲載しますので、よろしかったらそちらもご参照下さい。

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【朋誠堂喜三二作恋川春町画『親敵討腹鞁』(安永六年刊)・式亭三馬作初代歌川豊国、歌川豊広画『おとぎものがたり』(文化三年刊)を参考に挿入画を作成】

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