では、前回の続きの2017年の文学部の漢文の入試問題の後半の部分を学習します。
後半の文章と問題は以下の通りです。
後半の本文
後半の注 先君―自分の祖先。
先人―祖先。
李老君―老子をいう。老子の姓は李、名は耳。孔子が老子から礼を学んだという伝説がある。
太中大夫―官名。皇帝のそばにいて相談にあずかる役。
陳韙―人名。後漢の人。
了了―賢いさま。
(『世説新語』「言語第二」劉孝標注)
後半の設問
(設問は後半の部分のものを載せています。そのため、実際の設問の順序と異なります。)
問三 波線C「則」の読み方を、送り仮名も含めて平仮名で答えよ。
問四 傍線②「融与君、累世通家也」の解釈として最も適当なものを次の中から一つ選べ。
ア 私があなたさまに差し上げたいのは先祖伝来の家宝なのです。
イ 私の家もあなたさまの家と同様に誇らしい祖先をもつ家です。
ウ 私はあなたさまの家と代々親しくつきあっている家の者なのです。
エ 私はあなたさまとともに世にはびこる権勢家を打倒したいのです。
オ 私の家もあなたさまの家も何代も続いて政治家を出した家です。
問五 傍線③「衆坐莫不歎息」の解釈として最も適当なものを次の中から一つ選べ。
ア そこに居合わせた人でなげき悲しまないものはなかった。
イ 同席者の多くは讒言を恐れてなげくばかりであった。
ウ 多数の列席者のなかで安堵し喜ばないものはなかった。
エ 全員車座になり、議論をやめようとするものはなかった。
オ その場にいた者たちで褒めたたえないものはなかった。
問六 傍線④「長大未必能奇」の書き下し文は「長大にして未だ必ずしも奇なる能はず、と」であるが、これに従って返り点をつけよ。
問七 傍線⑤「即如所言君之幼時豈実慧乎」の解釈として最も適当なものを次の中から一つ選べ。
ア 仮にその話が本当だとすれば、あなたは幼いころ随分口達者だったことでしょう。
イ もし仰せの通りなら、あなたは幼いころさぞかし聡明だったことでしょう。
ウ 伝え聞くところによると、あなたは幼いこととても親孝行だったのですね。
エ 幼いころの発言をどうして恥じることがありましょうか。その必要はありません。
オ 世のうわさによると、あなたは幼いころとても利発で有名だったそうですね。
後半の解説
では、問三の読みの問題から見ていきましょう。
「則」は「すなはち」と読む接続詞で、「~ならば・~すると・そこで」という意味です。
次に、問四の解釈の問題ですが、傍線②の上の文章「先君孔子、与君先人李老君、
同徳比義、而相師友」の和訳が分からなければ解けない内容となっています。というのも、傍線Cの「則」が「Aならば、(結果として)Bである」という構造を作る接続詞だからです。
傍線②の上の文章は「孔融の先祖の孔子と李膺の先祖である老子は徳を同じようにして、義を比べ合わせた師と友である」という意味です。また、李老君の注の所にもヒントがあり、「孔子が老子から礼を学んだという伝説がある」ということからも、お互いの先祖が、関係があったということが分かります。これらを踏まえると、正解はウになります。
次に、問五の解釈の問題を見てみましょう。この問題は「莫不」と「歎息」の意味が分かるかを問うている問題です。「莫不」は重要句形で、「~ざるは莫し」という二重否定です。二重否定は強い肯定を表し、意味は「~しないものはいない」となります。まず、選択肢のイが削れます。次に「歎息」の意味ですが、「歎」は「なげきかなしむ」という意味ではなく、「褒め称える」という意味です。「驚嘆(驚歎)」という熟語が今でもありますが、この「歎」の意味と同じです。よって、正解はオになります。
次に、問六の返り点を施す問題を見ましょう。
返り点を施す問題のポイントは、書き下し文に載っている送り仮名を漢字の横に書きながら番号を振って、その後番号に従って返り点を付けていくという方法が一番よいです。
やってみますとこんな感じになります。「未」は再読文字「未だ~ず」です。
あとは、番号順に返り点を付けていけば大丈夫です。⑤と⑥が上下逆(⑥⑤)になっていますので、レ点を付け、⑥と⑦の間に④があります(⑦④⑥)ので、一二点と付けます。
問六の正解
最後に問七の解釈の問題を見ていきましょう。この問題のポイントは、傍線⑤の後の文章の内容を理解しているかということと、「如」の意味が分かるかということになります。
傍線⑤の後ろの文章は、孔融が発言した傍線⑤の内容を踏まえて、李膺が大笑いをしたとなっていますので、十歳の子供がとんちの効いたことを言ったということが想定できます。そうするとまず、ウとエが削れます。次に、「如」の意味ですが、比況の助動詞で「~ようだ」と訳します。この意味で訳している選択肢はイだけです。ちなみに「豈~乎」は、反語の「どうして~か。いや~ない」という意味もありますが、今回は、推測の「~だろうか」という意味です。
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後半の書き下し文
(※比況の助動詞「如」は普通は平仮名で書き下しますが、漢字の意味を残したいので、わざと漢字にしています)
後半の和訳
いかがでしたでしょうか。
今回は、かなり難しい内容の問題ばっかりでした。
問一、問二のB、問三、問六の基礎の問題は確実にとれるようにしておかなければ、合格は難しいかもしれません。
いやー、難しかったですね。
本当に「うさぎに祭文」になってしまいました。
でも、私、三国志が好きなので、孔融にこんなエピソードがあるなんて知らなくて、大変勉強になりました。
でも、孔融って曹操に殺されちゃう人ですよね。ゲームだと武力が高くなくて、ザコキャラ扱いですよ。
うさぎさん、ゲームするんですねー。
知りませんでした。そういえば、指、人間と同じだからコントローラ使えますもんね。
そうなんですよ。
こんな話していたら、三国志のゲームやりたくなっちゃった。
倉橋先生、これにて失礼いたします。
さようなら。
また、次回もお越し下さい。