『十八史略』「臥薪嘗胆」の書き下しと和訳と重要表現の解説1

お断り:この記事には、最初に倉橋先生とゆかいな仲間たちの戯れがあります。お急ぎの方は、上にある目次の見たい項目をクリックすると、その解説に飛びますので、そちらをご利用ください。なお、解説は真面目にしております。
 
 
うーん。
また、庭に
誰かいるよー。
 
 
 
 
  
 
 
あっ、ご主人。
すいません。勝手に
食事始めちゃって。
 
 
 
 
 
困ります。
一応、私の家の
敷地ですから。
 
 
 
 
ごめんなさい。
あなたの家に、
住んでたネズミが
おいしそうで、つい。
 
 
 
 
えっ?ネズミ、
食べてくれたんですか?
どおりで最近、屋根裏から
物音しないなあって
思ったわ。 
 
 
苦いんですよ。
ネズミって。
胆(きも)ぐらい。
 
 
 
 
 
そうなんですかー。
「臥薪嘗胆」の故事
みたいですね。 
 
 
 
「臥薪嘗胆」?
それ何ですか?
是非、教えて下さい。
 
 
 
 
 
よろしい。いいでしょう。
「臥薪嘗胆」の故事
お話し致しましょう。
 
 
 

「臥薪嘗胆」本文

 

「臥薪嘗胆」書き下し文

※カギカッコの中のひらがなは現代仮名遣いの読み仮名です。色が付いている箇所は漢字をひらがなで書き下す箇所です。助詞と助動詞はひらがなで書き下します。

①呉王(ごおう)闔廬(こうりょ)、伍員(ごうん)を挙(あ)げて国事を謀(はか)らしむ。
②員、字(あざな)は子胥(ししょ)、楚人(そひと)伍奢(ごしょ)子なり。
③奢、誅(ちゅう)せられて呉に奔(はし)り、呉の兵を以(ひき)ゐて郢(えい)に入る。
④呉、越(えつ)を伐(う)つ。
⑤闔廬傷つきて死す。
⑥子の夫差(ふさ)、立つ。
⑦子胥、復(ま)た之に事(つか)ふ。
⑧夫差、讎(あだ)を復(ふく)せんと志す。
⑨朝夕(ちょうせき)薪中(しんちゅう)に臥(が)し、出入(しゅつにゅう)するごとに人をして呼ばめて曰(い)はく、
⑩「夫差、而(なんじ) 越人(えつひと)而(なんじ)の父を殺ししを忘れたる。」と。
⑪周の敬王(けいおう)の二十六年、夫差、越を夫椒(ふしょう)に敗(やぶ)る。

 

語釈

語句 品詞と意味
①の文章  
 闔廬 名詞。春秋時代の呉の王の名前。
 挙ゲテ 動詞。意味は「重く用いる・重用する」。
 伍員 名詞。春秋時代の楚の武人。父と兄が楚の王に殺されたため、呉に亡命した。字は子胥。
 謀ラシム 動詞。意味は「考えをめぐらせる・当たらせる」。
 国事 名詞。意味は「国の政治」。
②の文章   
 伍奢 名詞。春秋時代の楚の武人。
 之 助詞。読みは「の」。意味は「~の」。
③の文章   
 誅セラレテ 動詞。意味は「罪をきせられて殺される」。
 而 置き字。読まない書き下さない。
 奔 動詞。意味は「逃亡する・亡命する」。
 以ヰテ 動詞。読みは「ひき(いる)」。意味は「率いる」。
 入 動詞。意味は「攻め入る」。
 郢 名詞。地名。楚の都。
④の文章   
 伐 動詞。意味は「討伐する・討つ」。
 越 名詞。国名。
⑤の文章   
 而 置き字。読まない書き下さない。
⑥の文章   
 夫差 名詞。呉王。闔廬の子。
 立 動詞。意味は「王位につく」。
⑦の文章   
 復 副詞。読みは「ま(た)」。意味は「同じく」。
 事 動詞。読みは「つか(ふ)」。意味は「仕える」。
⑧の文章   
 志 動詞。意味は「目標に立てる・決意する」。
 復セント 動詞。読みは「ふく(せんと)」。意味は「報いようとする」。
 讎 名詞。読みは「あだ」。「讐」と同じ意味。
⑨の文章   
 臥 動詞。意味は「寝る」。
 使ヲシテA 連語。重要句形。読みは「人(をして)Aし(む)」。意味は「人にAをさせる」。「使」は使役の助動詞。Aには動詞が入る。
⑩の文章   
 而 代名詞。読みは「なんじ」。意味は「お前」。
 之 格助詞の主格。読みは「の」。意味は「~が」。
 邪 疑問の助詞。読みは「か」。意味は「~か」。
⑪の文章   
 周敬王二十六年 連語。前四九四年。
 于 置き字。読まない書き下さない。
 夫椒 名詞。山の名前。

「臥薪嘗胆」和訳・現代語訳

①呉王の闔廬は、伍員を重用して、国政に当たらせた。
②伍員は字を子胥といい、楚の国の人、伍奢の子である。
③伍奢が(楚の王に)殺されたので、(伍員は)呉の国に亡命し、呉の兵を率いて、楚の都の郢に攻め入った。
④(その後)呉は越の国を討ち入った。
⑤(その時)闔廬は負傷し、(それがもとで)死んでしまった。
⑥(その後)闔廬の子の夫差が王位についた。
⑦子胥は、先代と同じく夫差に仕えた。
⑧夫差は父の仇を報いようと決意した。
⑨毎日薪を敷いた中に寝て、自室に出入りするたびごとに、家臣に叫ばせて、言わせた。⑩「夫差よ、お前は越人が、お前の父を殺したのを忘れたのか。」と。
⑪(このような努力をし、)周の敬王の二十六年(前四九四年)に、(ついに)夫差は越の軍を夫椒山で討ち破った。

漢文「臥薪嘗胆」の重要事項 

 
 
いかがでしたでしょうか。
最後にこの文章での
重要な所は次の通りです。
 
 
 

・⑨の文章にある「使ヲシテA」は重要句形ですので、書き下し文と訳ができるようにしておきましょう。

・③と⑤にある「而」と⑩にある「而」は意味が違いますので、分かるようにしておきましょう。

・⑩の文章は書き下しができるようにしておきましょう。

  

続きは以下のリンクからどうぞ。

『十八史略』「臥薪嘗胆」の書き下しと和訳と重要表現の解説2

  

【十返舎一九作画『化物太平記』(享和四年刊)を参考に挿入画を作成】

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