では、「安元の大火」の前回の続きの文章を見ていきましょう。
前回の解説はこちら。
本文
七珍万宝【注1】さながら【注2】灰燼【注3】となりにき【注4】。その費え【注5】、いくそばくぞ【注6】。そのたび、公卿の家十六焼けたり【注7】。まして、そのほか数へ知るに及ばず【注8】。すべて都のうち三分が一に及べりとぞ【注9】。男女死ぬるもの数十人。馬牛のたぐひ辺際【注10】を知らず【注11】。
人の営み、みな愚かなる【注12】中に、さしも【注13】危ふき京中の家を作るとて、財を費やし、心を悩ますことは、すぐれてあぢきなく【注14】ぞはべる【注15】。
重要な品詞と語句の解説
語句【注】 | 品詞と意味 |
1 七珍万宝 | 名詞。意味は「あらゆる種類の宝物」。 |
2 さながら | 副詞。意味は「すべて」。 |
3 灰燼 | 名詞。意味は「灰とちり」。読みは「かいじん」。 |
4 なりにき | ラ行四段動詞「なる」の連用形+完了の助動詞「ぬ」の連用形+過去の助動詞「き」の終止形。意味は「なってしまった」。 |
5 費え | 名詞。意味は「損害」。 |
6 いくそばく | 副詞。意味は「どれほど」。 |
7 焼けたり | カ行下二段動詞「焼く」の連用形+完了の助動詞「たり」の終止形。意味は「焼けてしまった」。 |
8 及ばず | バ行四段動詞「及ぶ」の未然形+打消の助動詞「ず」の終止形。意味は「できない」。 |
9 及べりとぞ | バ行四段動詞「及ぶ」の已然形+存続の助動詞「り」の終止形+格助詞「と」+係助詞「ぞ」。意味は「及んでいる(と聞いている)」。「ぞ」の後に「聞く」などが省略されている。
係り結びの省略については、以下のページで詳しく解説をしていますので、よろしかったら、ご確認下さい。 |
10 辺際 | 名詞。意味は「限度」。 |
11 知らず | ラ行四段動詞「知る」の未然形+打消の助動詞「ず」の終止形。意味は「分からない」。 |
12 愚かなる | ナリ活用の形容動詞「愚かなり」の連体形。 |
13 さしも | 副詞。意味は「あれほど」。 |
14 あぢきなく | ク活用の形容詞「あぢきなし」の連用形。意味は「つまらない」。 |
15 はべる | ラ変動詞「はべり」の連体形。意味は「ございます」。係助詞「ぞ」に呼応している。 |
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現代語訳
あらゆる種類の宝物がすべて灰とちりになってしまった。その損害はどれほどだろうか。その時、公卿の家が一六軒も焼けてしまった。まして、そのほか(の家)は数え知ることができない。全体で、都の中で(焼失した家屋は)三分の一に及んでいる(と聞いている)。男女の死んだ者は、数十人。馬や牛のたぐいの(死んだ)限度は、分からない。
人間の営みは、みな愚かなことであるがその中でも、あれほど危険な都の中に家を造るといって、財産を費やし、心を悩ますことは、この上なくつまらないことでございます。
人間の営みは、みな愚かなことであるがその中でも、あれほど危険な都の中に家を造るといって、財産を費やし、心を悩ますことは、この上なくつまらないことでございます。
いかがでしたでしょうか。
この箇所で特に重要な文法事項は次の通りです。
・注2と注14は重要単語ですので、意味が分かるようにしておきましょう。
・注9の「ぞ」の後に省略されている語を補えるようにしておきましょう。
ありがとうございました。
火事はやはり恐ろしいですね。
そうですね。特に
『方丈記』は建物の記述が
多いので、住居論として
大変勉強になります。
そうですかー。
私、ミニマリストに
憧れていますので、是非
読みたいと思います。
憧れていますので、是非
読みたいと思います。
ミニマリスト、
いいですよね。
勉強になりますから、
是非読んで下さい。