『建礼門院右京大夫集』「資盛との思ひ出」の現代語訳と重要な品詞の解説3

  

では、「資盛との思い出」の前回の続きの文章を見ていきましょう。

前回の解説はこちら。

  

『建礼門院右京大夫集』「資盛との思ひ出」の現代語訳と重要な品詞の解説2

  
  

本文

 さすが【注1】心ある限り、このあはれを言ひ思はぬ【注2】人はなけれど、かつ【注3】見る人々も、わが心の友はたれかはあらん【注4】おぼえしか【注5】ば、人にもものも言はれず【注6】つくづくと【注7】思ひ続けて、胸にも余れば、仏に向かひ奉り【注8】て、泣き暮らすほかのことなし。されど、げに【注9】、命は限りあるのみ【注10】あらず【注11】さま変ふる【注12】ことだに【注13】も心に任せで【注14】、一人走り出でなんどは、えせぬ【注15】ままに、さて【注16】あらるる【注17】心憂く【注18】て、

  またためし【注19】たぐひ【注20】知らぬ【注21】憂き【注22】ことを見てもさてある身ぞうとましき【注23】

重要な品詞と語句の解説

語句【注】 品詞と意味
1 さすが 副詞。意味は「さすがに」。
2 思はぬ ハ行四段動詞「思ふ」の未然形+打消の助動詞「ず」の連体形。意味は「思わない」。
3 かつ 副詞。意味は「一方」。
4 あらん ラ変動詞「あり」の未然形+推量の助動詞「ん」の連体形。意味は「いるだろう」。「ん」は係助詞「かは」に呼応している。

「む(ん)」の見分け方については、以下のページで詳しく解説をしていますので、よろしかったら、ご確認下さい。

助動詞「む(ん)」の識別の解説

5 おぼえしか ヤ行下二段動詞「おぼゆ」の連用形+過去の助動詞「き」の已然形。意味は「思われた」。
6 言はれず ハ行四段動詞「言ふ」の未然形+可能の助動詞「る」の未然形+打消の助動詞「ず」の終止形。意味は「言うことができない」。
7 つくづくと 副詞。意味は「じっと・しみじみと」。
8 向かひ奉り ハ行四段動詞「向かふ」の連用形+ラ行四段活用の補助動詞「奉る」の連用形。意味は「向かい差し上げる」。「奉り」は謙譲語で、仏に対する敬意。
9 げに 副詞。意味は「なるほど」。
10 に 断定の助動詞「なり」の連用形。

「に」の見分け方については、以下のページで詳しく解説をしていますので、よろしかったら、ご確認下さい。

「に」の識別の解説

11 あらず ラ変動詞「あり」の未然形+打消の助動詞「ず」の連用形。意味は「でない」。
12 さま変ふる ハ行下二段動詞「さま変ふ」の連体形。意味は「出家をして姿を変える」。
13 だに 副助詞。意味は「~さえ」。
14 任せで サ行下二段動詞「任す」の未然形+打消の接続助詞「で」。意味は「任せないで」。
15 えせぬ 副詞「え」+サ変動詞「す」の未然形+打消の助動詞「ず」の連体形。意味は「できない」。
16 さて 副詞。意味は「そのまま」。
17 あらるる ラ変動詞「あり」の未然形+自発の助動詞「る」の連体形。意味は「生きている」。
18 心憂く ク活用の形容詞「心憂し」の連用形。意味は「つらい」。
19 ためし 名詞。意味は「先例」。
20 たぐひ 名詞。意味は「同例」。
21 知らぬ ラ行四段動詞「知る」の未然形+打消の助動詞「ず」の連体形。意味は「知らない」。
22 憂き ク活用の形容詞「憂し」の連体形。意味は「つらい」。
23 うとましき シク活用の形容詞「うとまし」の連体形。意味は「嫌だ」。係助詞「ぞ」に呼応している。

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現代語訳

 さすがに人の心がある限り、(平家の都落ちという)この事件の憐れさを言ったり、思ったりしない人はいないけれども、一方で、身近で顔を合わせる人々でも、私の心を理解してくれる友は誰かいるだろうか、いや誰もいないと思ったので、他の人にも言うことができない。(一人で)しみじみと思い続けて、(つらい思いが)胸からあふれるので、御仏に向かい差し上げて、泣き暮らすよりほかのことはない。それでも、なるほど、人の命には寿命があるだけでなく、出家して姿を変えることさえもその時の感情に任せないで(結局できず)、(また)一人で逃げ出したりすることなども、できないままに、そのまま生きているのがつらくて(和歌を詠んだ)、

  他の先例も同例も知らないこんなつらい事件を見て、(それでも)そのまま生きているわが身が本当に嫌だ。

  

  

いかがでしたでしょうか。

この箇所で特に重要な文法事項は次の通りです。

  
  

・注15は重要表現ですので、現代語訳ができるようにしておきましょう。

・和歌は現代語訳ができるようにしておきましょう。

  

  

ありがとうございました。
資盛は平家の都落ちで
行ってしまったんですね。
悲しいことですね。

  
  

  

そうですね。この後、
壇ノ浦の戦いで、
平家は滅亡してしまって、
もっと可愛そうですが…。

  

  

うちの旦那も
都落ちでどこかへ
行ってしまったので
ないでしょうか?

  
  

  

それはちょっと違うのでは。
権兵衛さんは単に
飲みに出かけたのだと
思います。

  

なにー!!!

許さん!!!

  
  

  

うひぁ―。鬼になった!!

戦闘になる前に逃げろ―。

  
  

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