『枕草子』「中納言参りたまひて」の現代語訳と重要な品詞の解説2

  

では、「中納言参りたまひて」の前回の続きの文章を見ていきましょう。

前回の解説はこちら。

  

『枕草子』「中納言参りたまひて」の現代語訳と重要な品詞の解説1

  
  

「中納言参りたまひて」本文

さらに【注1】まだ見ぬ【注2】骨のさまなり【注3】。』となむ人々申す【注4】。まことにかばかり【注5】のは見えざりつ【注6】。」と、言高くのたまへ【注7】ば、「さては、扇の【注8】あらで【注9】、くらげのななり【注10】。」と聞こゆれ【注11】ば、「これは隆家が言にしてむ【注12】。」とて、笑ひたまふ【注13】

かやうのこと【注14】こそは、かたはらいたき【注15】ことのうちに入れつべけれ【注16】ど、「一つな落としそ【注17】。」と言へば、いかが【注18】せむ【注19】

「中納言参りたまひて」重要な品詞と語句の解説

語句【注】 品詞と意味
1 さらに 副詞。意味は「まったく」。
2 見ぬ マ行上一段動詞「見る」の未然形+打消の助動詞「ず」の連体形。意味は「見ない」。
3 なり 断定の助動詞「なり」の終止形。
4 申す サ行四段動詞「申す」の連体形。意味は「申し上げる」。謙譲語で、中宮定子、または中納言隆家(この場合は自尊敬語)に対する敬意。係助詞「なむ」に呼応している。
5 かばかり 副詞。意味は「これほど・このぐらい」。
6 見えさりつ ヤ行下二段動詞「見ゆ」の未然形+打消の助動詞「ず」の連用形+完了の助動詞「つ」の終止形。意味は「見たことがない」。
7 のたまへ ハ行四段動詞「のたまふ」の已然形。意味は「おっしゃる」。「言ふ」の尊敬語で、中納言隆家に対する敬意。

重要な尊敬語「のたまふ」については、以下のページで詳しく解説をしていますので、よろしかったら、ご確認下さい。

重要な尊敬語「のたまふ」の解説

8 に 断定の助動詞「なり」の連用形。

「に」の見分け方については、以下のページで詳しく解説をしていますので、よろしかったら、ご確認下さい。

「に」の識別の解説

9 あらで ラ変動詞「あり」の未然形+打消の接続助詞「で」。意味は「ではなくて」。
10 ななり 断定の助動詞「なり」の連体形+推定の助動詞「なり」の終止形。意味は「であるようだ」。元々は「ななり」であったが、「ななり」と撥音便化し、「ん」を表記しない「ななり」となった。
11 聞こゆれ ヤ行下二段動詞「聞こゆ」の已然形。意味は「申し上げる」。「言ふ」の謙譲語で、中納言隆家に対する敬意。
12 してむ サ変動詞「す」の連用形+強意(確述)の助動詞「つ」の未然形+意志の助動詞「む」の終止形。意味は「してしまおう」。

「む(ん)」の見分け方については、以下のページで詳しく解説をしていますので、よろしかったら、ご確認下さい。

助動詞「む(ん)」の識別の解説

13 笑いひたまふ ハ行四段動詞「笑ふ」の連用形+ハ行四段活用の補助動詞「たまふ」の終止形。意味は「お笑いになる」。「たまふ」は尊敬語で、中納言隆家に対する敬意。
14 かやうのこと 連語。意味は「このようなこと」。
15 かたはらいたき ク活用形容詞「かたはらいたし」の連体形。意味は「聞き苦しい・恥ずかしい」。
16 入れつべけれ ラ行下二段動詞「入る」の連用形+強意(確述)の助動詞「つ」の終止形+当然の助動詞「べし」の已然形。意味は「入れるべき」。

「べし」の見分け方については、以下のページで詳しく解説をしていますので、よろしかったら、ご確認下さい。

助動詞「べし」の識別の解説

17 な落としそ 副詞「な」+サ行四段動詞「落とす」の連用形+終助詞「そ」。意味は「書き洩らすな」。
18 いかが 副詞。意味は「どう」。
19 せむ サ変動詞「す」の未然形+意志の助動詞「む」の連体形。意味は「しよう」。「む」は係助詞「か」が変化した「いか」の「」に呼応している。

「中納言参りたまひて」現代語訳

『まったくいまだ見ない骨の様子である。』と人々が申しております。本当にこれほどの(骨)は見たことがありません。」と、大きな声でおっしゃるので、(私は)「それでは、扇の骨ではなくて、くらげの骨であるようですね。」と申し上げると、「これ(今の面白い発言)は隆家の言ったことにしてしまおう。」と言って、お笑いになる。
こういうことは、聞き苦しいことの中に入れるべきことであるが、「一つも書き洩らすな。」と(みんなが)言うので、(さて)どうしましょうか。

  

  

いかがでしたでしょうか。

この箇所で特に重要な文法事項は次の通りです。

  
  

・この話のどこが面白いかが答えられるようにしておきましょう。

→(見たことがない骨と隆家が言うので、作者(清少納言)が骨の存在しないクラゲの骨と答えるところ)

・注10「ななり」はもとの形が分かるようにしておきましょう。

  
  

ありがとうございました。
クラゲの骨、やはり
すごいんですね。
ほしいです。

  

  

クラゲの骨はこの世に
存在しないんですよ。
これは清少納言の
洒落なんですよ。

  
  
  
  いいえ。あります。
この世になくても
天狗の世界にはある
かもしれないので。
これにて失礼。
  

  

ああ…。行ってしまった。
天狗はいいなあ…。
空が飛べて…。

  
  
  

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