『徒然草』「ある人、弓射ることを習ふに」の現代語訳と重要な品詞の解説1

お断り:この記事には、最初に倉橋先生とゆかいな仲間たちの戯れがあります。お急ぎの方は、上にある目次の見たい項目をクリックすると、その解説に飛びますので、そちらをご利用ください。なお、解説は真面目にしております。
  
  
さて、来週講義でやる
『徒然草』の予習でも
するか。
  
  
  
   
  
ごめんくださーい。
倉橋さーん。
お届け物でーす。
  
  
  
  
はーい。
どちら様ですか?
  
  
  
  
私、あまぞんの配達員の
兼好です。
お荷物のお届けに
参りました。
  
  
  
  
  
えっ?兼好って、
『徒然草』の作者の
あの兼好法師ですか?
あまぞんの配達員、
してるんですか?
  
  
  そうでーす。
普段は草庵に住んで
いるんですが、暇なんで
時々、配達のバイト
してるんでーす。
  
  
  
  
意外すぎる…。
でも、バイトする必要
ないでしょ。
『徒然草』、めっちゃ
売れてるんだから。
  
    
まあ、そうですけど。
英語にも翻訳されていて、
ちまたでは、
「世界の兼好」なんて
呼ばれたりしています。
  
  
  
へえー。
そうなんですかー。
やっぱり『徒然草』の
影響はすごいですねー。
  
  
  
ちなみに「世界の」って
付いているからって
あの人と比較しないで
下さいね。私、
多目的トイレで不貞行為
しませんから。
  
  
  
(笑)(笑)(笑)。
また、旬な人を
持ってきますねー。
  
  
    
  
ところで、倉橋さん。
今、何されてたんですか?
  
  
  
  
来週から講義でやる
『徒然草』の予習を
してたんです。
  
  
  
  
  
よかったら、
教えましょうか?
私、書いたんで。
  
  
  
  
  
是非、お願いします。
  
  
  
  

本文

 ある【注1】人、弓射る【注2】ことを習ふ【注3】に、諸矢【注4】たばさみ【注5】て的に向かふ【注6】。師【注7】いはく【注8】、「初心の人、二つの矢を持つ【注9】ことなかれ【注10】。後の矢を頼み【注11】て、初めの矢になほざり【注12】の心あり【注13】。毎度ただ得失【注14】なく【注15】、この一矢に定むべし【注16】思へ【注17】。」と言ふ【注18】わづかに【注19】二つの矢、師の前にて【注20】一つをおろかに【注21】せん【注22】思はんや【注23】懈怠の心【注24】みづから【注25】知らず【注26】いへ【注27】ども、師これを知る。この戒め、万事【注28】わたるべし【注29】

重要な品詞と語句の解説

語句【注】 品詞と意味
1 ある 連体詞。意味は「ある」。
2 射る ヤ行上一段動詞「射る」の連体形。
3 習ふ ハ行四段動詞「習ふ」の連体形。
4 諸矢 名詞。対になった二つの矢のこと。
5 たばさみ マ行四段動詞「たばさむ」の連用形。意味は「手にはさみ持つ」。
6 向かふ ハ行四段動詞「向かふ」の終止形。
7 の 格助詞の主格。意味は「~が」。
8 いはく 「言ふ」のク語法。意味は「言うことには」。
9 持つ タ行四段動詞「持つ」の連体形。
10 なかれ ク活用の形容詞「なし」の命令形
11 頼み マ行四段動詞「頼む」の連用形。
12 なほざり 名詞。意味は「いいかげん・おろそか」。
13 あり ラ変動詞「あり」の終止形。
14 得失 名詞。意味は「成功と失敗」。
15 なく ク活用の形容詞「なし」の連用形
16 定むべし マ行下二段動詞「定む」の終止形+意志の助動詞「べし」の終止形。意味は「決めよう」。
17 思へ ハ行四段動詞「思ふ」の命令形。
18 言ふ ハ行四段動詞「言ふ」の終止形。
19 わづかに ナリ活用の形容動詞「わづかなり」の連用形
20 にて 格助詞。場所を表す。
21 おろかに ナリ活用の形容動詞「おろかなり」の連用形。意味は「いい加減」。
22 せん サ変動詞「す」の未然形+意志の助動詞「ん」の終止形。意味は「しよう」。
23 思はんや ハ行四段動詞「思ふ」の未然形+推量の助動詞「ん」の終止形+反語の係助詞「や」。意味は「思うだろうか。(いや思わない)」。
24 懈怠の心 連語。意味は「怠ける心」。
25 みづから 副詞。意味は「自分自身で」。
26 知らず ラ行四段動詞「知る」の未然形+打消の助動詞「ず」の終止形。意味は「分からない」。
27 いへ ハ行四段動詞「言ふ」の已然形。
28 万事 名詞。意味は「すべてのこと」。
29 わたるべし ラ行四段動詞「わたる」の終止形+推量の助動詞「べし」の終止形。意味は「通じるだろう」。

スポンサーリンク

現代語訳

 ある人が弓を射ることを習っている時に、二本の矢を手に挟んで持って的に向かった。(その時)弓の師匠が言うことには、「初心の人は、二本の矢を持ってはならない。後の矢をあてにして、最初の矢をおろそかにする心がある。(だから)毎回、成功と失敗を気にすることなく、この一矢で決めようと思いなさい。」と言った。わずかに二本の矢で、しかも師匠の前で、一本の矢をいい加減にしようと思うだろうか。(いや思わない。)怠ける心は、自分自身では分からないと言うが、師匠はこれを知っている。この教訓はすべてのことに通じることであろう。
  

  

いかがでしたでしょうか。

この箇所で特に重要な文法事項は次の通りです。

  
  

・上にある「重要な品詞と語句の解説」で赤く色が付いてある形容詞と形容動詞の種類と活用形が分かるようにしておきましょう。

・注23の現代語訳が分かるようにしておきましょう。

  

続きは以下のリンクからどうぞ。

『徒然草』「ある人、弓射ることを習ふに」の現代語訳と重要な品詞の解説2

  

【曲亭馬琴作北尾重政画『時代世話足利染』(寛政十年刊)を参考に挿入画を作成】

シェアする

スポンサーリンク