目次
ふぅー、仕事終わりの
一服はうまいなぁー。
おや、庭先に猫が来ている。
「に」ゃん。
かわいいなぁー。
「に」ゃん。
あっ、ご主人、
勝手に庭に入って
すいません。
しゃべった!?
猫がしゃべった!!
あなた、今までウサギとか、
スズメとかタイとかと
普通にしゃべってたでしょ。
設定忘れたの?
すいません。忘れてました。
ところで、セリフの「に」に
色が付いていますが、
なんでですか?
今日は「に」の識別を
やるからでーす。
では、張り切って
参りましょう。
え―。
「に」の種類の解説
「に」の種類は全部で6種類あります。重要度は星の色の数で表示しています。
①断定の助動詞「なり」の連用形 ★★★★★
②完了の助動詞「ぬ」の連用形 ★★★★★
③ナリ活用の形容動詞の連用形の活用語尾 ★★★☆☆
④格助詞 ★★☆☆☆
⑤接続助詞 ★☆☆☆☆
⑥副詞の語尾 ★☆☆☆☆
詳しく解説します。
①断定の助動詞「なり」の連用形の解説
①の「に」は、断定の助動詞「なり」の連用形で、「に」の前には、名詞などの体言や動詞、形容詞、助動詞など活用する語の連体形がきます。
体言・活用語の連体形+に
「~で・~であって」と訳します。
例文を見てみましょう。
たれもいまだ都慣れぬほどにて、え見つけず。(『更級日記』「物語」)
(現代語訳)
誰もがいまだ都に慣れていない時であって、(『源氏物語』を)見つけることができない
断定の助動詞の連用形の「に」は、「にて」・「にして」・「にや」・「にか」などの形で用いられることが多いです。
②完了の助動詞「ぬ」の連用形の解説
②の「に」は、完了の助動詞「ぬ」の連用形で、「に」の前には、名詞などの体言や動詞、形容詞、助動詞など活用する語の連用形がきます。
活用語の連用形+に
後ろに助動詞が付くことが多く、「にき(「き」は過去の助動詞)」は、「~してしまった」と訳し、「にけり(「けり」は過去の助動詞)」も、「~してしまった」と訳し、「にたり(「たり」は完了の助動詞)」は、「~てしまっている」と訳します。
例文を見てみましょう。
ふるさとにいとはしたなくてありければ、心地惑ひにけり。(『伊勢物語』第一段「初冠」)
(現代語訳)
旧都に、たいそう不釣り合いで(美しい姉妹が住んで)いたので、(男は)心が乱れてしまった。
③ナリ活用の形容動詞の連用形の活用語尾
③の「に」は、ナリ活用の形容動詞の連用形の活用語尾で、「に」の前にある言葉とセットで一つの言葉であるため、切り離すことができません。形容動詞の見分け方は、①前に「いと」を付けて意味が通じる、②前に「この」を付けて意味が通じない、③主語にならないなどがあります。
形容動詞の末尾の「に」
訳はその単語によって異なります。
例文を見てみましょう。
翁やうやう豊かになりゆく。(『竹取物語』「おひたち」)
(現代語訳)
翁は次第に豊かになってゆく。
④格助詞
④の「に」は、格助詞の「に」で、「~に」と訳す普通の「に」です。「に」の前には、場所や時間、人や物などを指す名詞などの体言が来ます。
体言+に
例文を見てみましょう。
「かれは何ぞ。」となむ男に問ひける。(『伊勢物語』第六段「芥川」)
(現代語訳)
「あれは何ですか。」と男にたずねた。
⑤接続助詞
⑤の「に」は、接続助詞の「に」で、「~が」や「~ので」と訳します。「に」の前には、動詞や形容詞、助動詞などの活用語の連体形が来ます。
活用語の連体形+に
例文を見てみましょう。
入相ばかりのことなるに、薄氷は張つたりけり(『平家物語』「木曾最期」)
(現代語訳)
日没の時であったので、薄氷が張っていた
⑥副詞の語尾
例文を見てみましょう。
君すでに都を出でさせ給ひぬ。(『平家物語』「忠度都落」)
(現代語訳)
主上はすでに都を出なさった。
まとめ
「に」の識別は六種類もあり、結構めんどくさいを思われますが、大学入試で問われるのは、①と②が圧倒的に多いです。まず、①と②の助動詞の「に」覚えるようにしましょう。④と⑤の助詞は①と前の言葉の接続がかぶるため、判断がつきにくいですが、訳してみて、「~に」でしたら、格助詞、「~ので・~が」でしたら、接続助詞と覚えるとよいでしょう。入試問題を使った練習問題を用意しましたので、よろしかったら、そちらもご参照下さい。
【市場通笑作『猫嫁入』(天明二年刊)を参考に挿入画を作成】