近畿大学の古文の入試問題の解説(2011年)

お断り:この記事には、最初に倉橋先生とゆかいな仲間たちの戯れがあります。お急ぎの方は、上にある目次の見たい項目をクリックすると、その解説に飛びますので、そちらをご利用ください。なお、解説は真面目にしております。

今回は、2011年のA日程の古文の入試問題を学習しましょう。

こんにちは。倉橋先生。
近大と言ったら、マグロですね。
というわけで、私がやって参りました。

えっ、あなた、マグロじゃなくて、タイですよね?

何言ってるんですか。
どこから見てもマグロでしょ?
私は江戸時代、味噌仕立てのお吸い物として人気だったんですよ。

それは、鯛の味噌吸(みそず)ですよね?

やっぱり、タイじゃないですかー。

うるさいなー。
マグロだって言ってるでしょ。
これ以上よけいなこと言ったら、ぶん投げますよ。

すいません。マグロで結構です。

それでは、入試問題を見ていきましょう。

本文が長いので、前半と後半に分けます。

過去問に挑戦!

前半の本文

次の文章を読んで、後の問いに答えよ。

歌は、おもふままに、ただにいひ出る物にはあらず、かならず①言(ことば)にあやをなして、ととのへいふ道にして、神代(かみよ)よりさる事にて、そのよく出来てめでたきに、人も神も感じ給ふわざなるがゆゑに、既に万葉にのれるころの歌とても、多くは②よき歌をよまむと、求めかざりてよめる物にして、実情(まことのこころ)のままのみにはあらず。上代(かみつよ)の歌にも、③枕詞、序詞などのあるを以てもさとるべし。枕詞や序などは、心に思ふことにはあらず、詞(ことば)のあやをなさん料(れう)に、まうけたる物なるをや。④もとより歌は、おもふ心をいひのべて、人に聞かれて、聞く人のあはれと感ずるによりて、わが思ふ心は、こよなくはるくることなれば、⑤人の聞くところを思ふも、歌の本意なり

前半の設問

問一 傍線①はどのようなことか。最も適切なものを次の中から一つ選べ。

ア 言葉に技巧をこらして  イ 言葉をあいまいにして

ウ 言葉の順序を整理して  エ 言葉への理解を深めて

問二 傍線②はどのようなことか。最も適切なものを次の中から一つ選べ。

ア 良い歌を詠みたいと、願い求める心をふくらませて詠んだもの

イ 良い歌を詠もうと思って、表現の手本を探し出して詠んだもの

ウ 良い歌を詠もうとして、自ら望んで表現を工夫して詠んだもの

エ 良い歌を詠みたいと思い、よりよい前例を求めつつ詠んだもの

問三 傍線③について、「枕詞」を含まない歌として最も適切なものを次の中から一つ選べ。

ア 夜も寝ず安くもあらず白たへの衣も脱かじ直(ただ)に逢ふまでに

イ 思へども思ひもかねつあしひきの山鳥の尾の長きこの夜を

ウ 人もなき空しき家は草枕旅にまさりて苦しかりけり

エ 岩が根のこごしき山を越えかねて音(ね)には泣くとも色に出でめやも

問四 傍線④によれば、「歌」はどのような性質のものか。最も適切なものを次の中から一つ選べ。

ア 聞く人にしみじみとした情趣を感じさせることで、自分の感性に磨きがかかる性質のもの

イ あれこれ思う自分の気持ちを託し、他者の共感を得ることによって心が晴れる性質のもの

ウ つらい気持ちを述べて周囲に気の毒だと思いやってもらうことで、慰められる性質のもの

エ 歌に込めた自分の思いに他人が賛同するかどうかで、その思いの価値が決まる性質のもの

問五 傍線⑤はどのようなことか。最も適切なものを次の中から一つ選べ。

ア 人々の聞き方を思いやることも、詠み手の意志によるものである

イ 人々が自分の歌をどこで聞くのか考えることも、歌の本質である

ウ 他人が自分の歌を聞く様子を思い描くことも、歌の醍醐味である

エ 他人の受け取り方を思いやることも、歌の本来のありようである

前半の設問の解説

では、問題の解説をしていきます。

問一は、「あや」という言葉の意味が分かるかということがポイントになります。今でも「ことばの綾(あや)=ことばを飾って巧みに言い表すこと」という表現で使われますが、「あや」とは「文章の飾りや修辞」という意味です。よって、正解はアになります。

問一の正解:ア 言葉に技巧をこらして

次に、問二の傍線の意訳の問題ですが、まず、傍線内にある「む」が何の助動詞かが分かると選択肢が二つに絞られる問題です。「む」は意志の助動詞(~よう)で、「よまむ」は「詠もう」という訳になります。「む」には、願望の意味(~たい)はありませんので、アとエは間違いとなります。あとは、「かざり(飾り)」の意味が分かればよいということになります。ここでの「かざり」は言葉を飾るという意味ですので、「表現を工夫して」ということが書いてあるウが正解になります。

問二の正解:ウ 良い歌を詠もうとして、自ら望んで表現を工夫して詠んだもの

次は、問三の「枕詞」の問題ですが、そもそも「枕詞」とは何でしょうか。

枕詞とは、和歌の修辞法の一種で、一定の語句の上について、その言葉を修飾するが、全体の主意には直接にはかかわらないもののこと。基本的に五音からなる。

例:【枕詞】ひさかたの 【修飾される語】光・月
【枕詞】たらちねの 【修飾される語】母・親

選択肢の中で、枕詞があるものを探していくと、アは、「白たへの」が枕詞で、「衣」を修飾しています。イは、「あしひきの」が枕詞で、「山鳥」を修飾しています。ウは、「草枕」が枕詞で、「旅」を修飾しています。エには、枕詞はありません。

問三の正解:エ 岩が根のこごしき山を越えかねて音(ね)には泣くとも色に出でめやも

次に、問四の傍線の解釈の問題ですが、このような問題は基本、傍線の現代語訳に忠実な選択肢が正解である可能性が高いです。ですから、できるだけ本文すべてをきちんと訳した選択肢を探しましょう。
今回は、「はるくる」をきちんと訳している選択肢を探します。「はるくる」は「心が晴れる」という意味の動詞で、イが忠実に訳しています。イの選択肢は、「おもふ心をいひのべて、」を、「あれこれ思う自分の気持ちを託し」と訳し、「人に聞かれて、聞く人のあはれと感ずるによりて」を、少し省略してますが、「他者の共感を得ることによって」ときちんと訳していますので、正解となります。その他の選択肢は、傍線④に書かれていない情報が多く入っています。

問四の正解:イ あれこれ思う自分の気持ちを託し、他者の共感を得ることによって心が晴れる性質のもの

次に問五ですが、傍線内にある「聞く」の意味を具体的に説明したものを探すという問題です。まず、傍線内にある「本意」の意味から確認しましょう。「本意(ほい)」は「本来の目的」という意味の重要単語で、板野先生のゴロで覚える古文単語ゴロ565」にも載っています。「本意」の意味を踏まえると、和歌の本来の目的というのが、「人の聞くところを思ふ」ということになるのですが、「聞く」とは「他人が聞いて感じたことを思い計る」という意味になりますので、エが正解になります。

問五の正解:エ 他人の受け取り方を思いやることも、歌の本来のありようである

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現代語訳

和歌は、思うまま、そのまま出てくるものではない。必ず言葉に技巧をこらして、整えて詠むものであって、神々が統治していた時代からそのようなことであって、良くできて素晴らしい和歌に、人も神も感動しなさることがあるゆえ、既に万葉集に載っているころの歌でも、その多くは良い歌を詠もうと、言葉を飾って詠んでいる物であり、誠の心ままではない。上代の歌にも、枕詞、序詞などがあるのを根拠に分かるだろう。枕詞や序詞などは、心で思ったことではなく、言葉の技巧をしようとするためのもので、用意した物であるのだ。もともと和歌は、思う心を述べて、人に聞かれて、聞く人がしみじみとした感動することにより、自分の心もこの上なく晴れることであるので、人が聞いてどう感じるかを思い計るのも、和歌の本来の目的である。

いかがでしたでしょうか。

問一と問二と問四は簡単な問題ですので、ここを間違えないようにして、問三と問五のどちらかが合っていたら、前半に関しては合格点と言えるでしょう。

後半の本文と問題は別のページで紹介していますので、よろしかったら、そちらもご参照下さい。

近畿大学の古文入試問題(2011年)の後半の頁(ページ)

【恋川春町作画『辞闘戦新根』(安永七年刊)を参考に挿入画を作成】

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