では、「唐に卒塔婆血つくこと」の前回の続きの文章を見ていきましょう。
前回の解説はこちら。
『宇治拾遺物語』「唐に卒塔婆血つくこと」の現代語訳と重要な品詞の解説1
本文
重要な品詞と語句の解説
語句【注】 | 品詞と意味 |
1 にか |
断定の助動詞「なり」の連用形+係助詞「か」。「にか」の後ろに「あるらん」などが省略されている。意味は「だろうか」。 係り結びの省略については、以下のページで詳しく解説をしていますので、よろしかったら、ご確認下さい。 |
2 あやしがり | ラ行四段動詞「あやしがる」の連用形。意味は「不思議に思う」。 |
3 問はん |
ハ行四段動詞「問ふ」の未然形+意志の助動詞「ん」の終止形。意味は「尋ねよう」。 「む(ん)」の見分け方については、以下のページで詳しく解説をしていますので、よろしかったら、ご確認下さい。 |
4 言ひ合はせける | サ行下二段動詞「言ひ合はす」の連用形+過去の助動詞「けり」の連体形。意味は「相談した」。 |
5 常のこと | 連語。意味は「いつものこと」。 |
6 なれ | 断定の助動詞「なり」の已然形。 |
7 はふはふ | 副詞。意味は「這うようにして」。 |
8 登りけり | ラ行四段動詞「登る」の連用形+過去の助動詞「けり」。 |
9 わ女 | 連語。意味は「お主」。 |
10 来るだに | カ変動詞「来(く)」の連体形+副助詞「だに」。意味は「来るだけでも」。 |
11 大事なる | ナリ活用の形容動詞「大事なり」の連体形。 |
12 涼まん | マ行四段動詞「涼む」の未然形+意志の助動詞「ん」の終止形。意味は「涼もう」。 |
13 こそあれ | 係助詞「こそ」+ラ変動詞「あり」の已然形。 |
14 にて |
格助詞「にて」。 「にて」の見分け方については、以下のページで詳しく解説をしていますので、よろしかったら、ご確認下さい。 |
15 あやしき | シク活用の形容詞「あやし」の連体形。意味は「不思議だ」。 |
16 わざ | 名詞。意味は「動作・おこない」。 |
17 なれ | 断定の助動詞「なり」の已然形。係助詞「こそ」に呼応している。 |
18 知らせたまへ | ラ行四段動詞「知る」の未然形+使役の助動詞「す」の連用形+ハ行四段活用の補助動詞「たまふ」の命令形。意味は「知らせてください・教えてください」。「たまへ」は尊敬語で、女に対する敬意。 |
19 言ひけれ | ハ行四段動詞「言ふ」の連用形+過去の助動詞「けり」の已然形。 |
20 げに | 副詞。意味は「いかにも・本当に」。 |
21 思ひたまふらん | ハ行四段動詞「思ふ」の連用形+ハ行四段活用の補助動詞「たまふ」の終止形+現在推量の助動詞「らん」の終止形。意味は「お思いになるだろう」。「たまふ」は尊敬語で、若き主たちに対する敬意。 |
22 まうで来 | カ変動詞「まうで来(く)」の連用形。意味は「参上する・参詣する」。「来」の謙譲語で、卒塔婆に対する敬意。 |
23 にしも |
断定の助動詞「なり」の連用形+副助詞「しも」。 「に」の見分け方については、以下のページで詳しく解説をしていますので、よろしかったら、ご確認下さい。 |
24 はべらず | ラ変動詞「はべり」の未然形+打消の助動詞「ず」の終止形。意味は「ございません」。「はべら」は丁寧語で、若き主たちに対する敬意。 |
25 見たてまつるなり | マ行上一段動詞「見る」の連用形+ラ行四段活用の補助動詞「たてまつる」の連体形+断定の助動詞「なり」の終止形。意味は「拝見(拝観)するのである」。「たてまつる」は謙譲語で、卒塔婆に対する敬意。 |
26 の |
格助詞の主格。意味は「~が」。 「の」の見分け方については、以下のページで詳しく解説をしていますので、よろしかったら、ご確認下さい。 |
27 あやしくはべるなり | シク活用の形容詞「あやし」の連用形+ラ変動詞「はべり」の連体形+断定の助動詞「なり」の終止形。意味は「不思議でございますのである」。 |
28 ゆゑ | 名詞。意味は「理由」。 |
29 のたまへ | ハ行四段動詞「のたまふ」の命令形。意味は「おっしゃってください」。「言ふ」の尊敬語で、女に対する敬意。 |
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現代語訳
いかがでしたでしょうか。
この箇所で特に重要な文法事項は次の通りです。
・敬語表現は誰に対する敬意かが分かるようにしておきましょう。
(注18・21・22・24・25・29)
・係り結びの省略は省略された語が補えるようにしておきましょう。
続きは以下のリンクからどうぞ。