『源氏物語』「若紫との出会い」の現代語訳と重要な品詞の解説6

  

では、「若紫との出会い」の前回の続きの文章を見ていきましょう。

前回の解説はこちら。

  

『源氏物語』「若紫との出会い」の現代語訳と重要な品詞の解説5

  
  

本文

 僧都【注1】あなたより【注2】て、「こなたはあらはに【注3】侍らむ【注4】。今日しも、端におはしましけるかな【注5】。この上の聖の方に、源氏の中将【注6】わらはやみ【注7】まじなひにものし給ひける【注8】を、ただ今なむ聞きつけ侍る【注9】いみじう【注10】忍び給ひけれ【注11】ば、知り侍らで【注12】、ここに侍り【注13】ながら、御とぶらひ【注14】にもまうでざりける【注15】。」とのたまへ【注16】ば、「あな【注17】いみじや【注18】。いとあやしき【注19】さまを、人や見つらむ【注20】。」とて、簾下ろしつ【注21】。「この世にののしり給ふ【注22】光源氏、かかるついでに見奉り給はむや【注23】世を捨てたる【注24】法師の心地にも、いみじう世の憂へ忘れ、よはひ【注25】延ぶる【注26】人の御ありさまなり【注27】いで【注28】御消息【注29】聞こえむ【注30】。」とて立つ音すれば、帰り給ひぬ【注31】

重要な品詞と語句の解説

語句【注】 品詞と意味
1 僧都 名詞。僧で尼君の兄。
2 来 カ変動詞「来(く)」の連用形。
3 あらはに ナリ活用の形容動詞「あらはなり」の連用形。意味は「丸見えだ」。
4 侍らむ ラ変動詞「侍り」の未然形+推量の助動詞「む」の連体形。意味は「ございましょう」。「侍ら」は丁寧語で、尼君に対する敬意。「む」は係助詞「や」に呼応している。

係り結びの法則については、以下のページで詳しく解説をしていますので、よろしかったら、ご確認下さい。

係り結びの法則の解説

5 おはしましけるかな サ行四段動詞「おはします」の連用形+詠嘆の助動詞「けり」の連体形+詠嘆の終助詞「かな」。意味は「いらっしゃいますなあ」。「おはしまし」は「あり」の尊敬語で、尼君に対する敬意。
6 の 格助詞の主格。意味は「~が」。

「の」の見分け方については、以下のページで詳しく解説をしていますので、よろしかったら、ご確認下さい。

助詞「の」の識別の解説

7 わらはやみ 名詞。マラリアに似た熱病のこと。おこり。
8 ものし給ひける サ変動詞「ものす」の連用形+ハ行四段活用の補助動詞「給ふ」の連用形+過去の助動詞「けり」の連体形。意味は「来なさった・お越しになった」。「給ひ」は尊敬語で、光源氏に対する敬意。
9 聞きつけ侍る カ行下二段動詞「聞きつく」の連用形+ラ変活用の補助動詞「侍り」の連体形。意味は「聞きつけます」。「侍る」は丁寧語で、尼君に対する敬意。「侍る」は係助詞「なむ」に呼応している。
10 いみじう シク活用の形容詞「いみじ」の連用形。意味は「なみなみでない」。「いみじ」は「いみじ」がウ音便化している。
11 忍び給ひけれ バ行四段動詞「忍ぶ」の連用形+ハ行四段活用の補助動詞「給ふ」の連用形+過去の助動詞「けり」の已然形。意味は「お忍びでいらした」。「給ひ」は尊敬語で、光源氏に対する敬意。
12 知り侍らで ラ行四段動詞「知る」の連用形+ラ変活用の補助動詞「侍り」の未然形+打消の接続助詞「で」。意味は「存じませんで」。「侍ら」は丁寧語で、尼君に対する敬意。
13 侍り ラ変動詞「侍り」の連用形。意味は「おります」。「侍り」は丁寧語で、尼君に対する敬意。
14 御とぶらひ 名詞。意味は「お見舞い」。
15 まうでざりける ダ行下二段動詞「まうづ」の未然形+打消の助動詞「ず」の連用形+詠嘆の助動詞「けり」の連体形。意味は「参りませんでしたよ」。「まうで」は「行く」の謙譲語で、光源氏に対する敬意。
16 のたまへ ハ行四段動詞「のたまふ」の已然形。意味は「おっしゃる」。「言ふ」の尊敬語で、僧都に対する敬意。
17 あな 感動詞。意味は「まあ」。
18 いみじや シク活用の形容詞「いみじ」の終止形+間投助詞「や」。意味は「大変だ」。
19 あやしき シク活用の形容詞「あやし」の連体形。意味は「粗末だ」。
20 見つらむ マ行上一段動詞「見る」の連用形+完了の助動詞「つ」の終止形+推量の助動詞「らむ」の連体形。意味は「見てしまっているだろう」。「らむ」は係助詞「や」に呼応している。
21 下ろしつ サ行四段動詞「下ろす」の連用形+完了の助動詞「つ」の終止形。意味は「下ろしてしまった」。
22 ののしり給ふ ラ行四段動詞「ののしる」の連用形+ハ行四段活用の補助動詞「給ふ」の連体形。意味は「ご評判であられる」。「給ふ」は尊敬語で、光源氏に対する敬意。
23 見奉り給はむや マ行上一段動詞「見る」の連用形+ラ行四段活用の補助動詞「奉る」の連用形+ハ行四段活用の補助動詞「給ふ」の未然形+勧誘の助動詞「む」の終止形+係助詞「や」。意味は「拝見差し上げましょうか」。「奉り」は謙譲語で、光源氏に対する敬意。「給は」は尊敬語で、尼君に対する敬意。

「む(ん)」の見分け方については、以下のページで詳しく解説をしていますので、よろしかったら、ご確認下さい。

助動詞「む(ん)」の識別の解説

24 世を捨てたる 名詞+格助詞「を」+タ行下二段動詞「捨つ」の連用形+完了の助動詞「たり」の連体形。意味は「出家してしまった」。
25 よはひ 名詞。意味は「寿命」。
26 延ぶる バ行上二段動詞「延ぶ」の連体形。
27 なり 断定の助動詞「なり」の終止形。
28 いで 感動詞。意味は「さあ」。
29 御消息 名詞。意味は「ご案内」。
30 聞こえむ ヤ行下二段動詞「聞こゆ」の未然形+意志の助動詞「む」の終止形。意味は「差し上げよう」。「聞こえ」は謙譲語で、尼君に対する敬意。
31 帰り給ひぬ ラ行四段動詞「帰る」の連用形+ハ行四段活用の補助動詞「給ふ」の連用形+完了の助動詞「ぬ」の終止形。意味は「お帰りになった」。「給ひ」は尊敬語で、光源氏に対する敬意。

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現代語訳

 僧都があちらからやって来て、「こちらは丸見えでございましょう。今日という日に限って、端にいらっしゃいますなあ。この上の聖の坊に、源氏の中将が、熱病の完治の御祈願にお越しになったのを、たった今聞きつけました。たいそうお忍びでいらしたので、(全然)存じませんで、(私が)ここにおりますのに、お見舞いにも参りませんでしたよ。」とおっしゃったところ、(女房が、)「まあたいへんだわ。とても粗末な有様を、誰かが見てしまっているだろうか。」と言って、簾を下ろしてしまった。(僧都は)「世間でご評判であられる光源氏を、この機会に拝見差し上げましょうか。世を捨ててしまった法師ある私の心にも、(姿を拝見すれば)たいそう世の憂いも忘れ、寿命が延びる人のご様子であります。さあ、ご案内差し上げましょう。」と言って立ち上がる音がするので、(光源氏は)お帰りになった。

  

いかがでしたでしょうか。

この箇所で特に重要な文法事項は次の通りです。

  
  

・敬語表現は誰に対する敬意かと現代語訳が分かるようにしておきましょう。

・注20「見つらむ」と注24「世を捨てたる」は重要表現ですので、品詞分解と現代語訳が分かるようにしておきましょう。

  

  

ありがとうございました。
垣間見するのは、
今も昔も変わらず
楽しいですね♪

  

  

そうですか。
私は趣味じゃないですが。

  
  

  

あんたー!!!

  
  
  

  

権兵衛さん、奥さん、
また怒って、鬼嫁化
してますよ。

  
  

  

見つかっちゃった…。
倉橋先生、
今回も一緒に戦って下さい。

  

  

えっ?私、関係ないですよ。

また、戦うんですか?

  
  

  

次は勝てます!

私、レベル上がったんで。

  
  

  

  

おっ、権兵衛さん。
前よりも
レベル上がってる。

  
  

  

倉橋先生も上がってますよ。
私が攻撃を担当しますから
先生は回復担当で
お願いします。

  
  

  

わかりました。

今度は勝ちましょう。

  
  

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