では、「唐に卒塔婆血つくこと」の前回の続きの文章を見ていきましょう。
前回の解説はこちら。
『宇治拾遺物語』「唐に卒塔婆血つくこと」の現代語訳と重要な品詞の解説2
本文
重要な品詞と語句の解説
語句【注】 | 品詞と意味 |
1 おのれ | 代名詞。意味は「わたくし」。 |
2 にて |
格助詞「にて」。意味は「~で」。 「にて」の見分け方については、以下のページで詳しく解説をしていますので、よろしかったら、ご確認下さい。 |
3 失せはべりにし | サ行下二段動詞「失す」の連用形+ラ変活用の補助動詞「はべり」の連用形+完了の助動詞「ぬ」の連用形+過去の助動詞「き」の連体形。意味は「亡くなりました」。「はべり」は丁寧語で、若き主たちに対する敬意。「し」は係助詞「なん」に呼応している。 |
4 にて | 格助詞「にて」。意味は「~で」。 |
5 失せたまへりし | サ行下二段動詞「失す」の連用形+ハ行四段活用の補助動詞「たまふ」の已然形+完了の助動詞「り」の連用形+過去の助動詞「き」の連体形。意味は「お亡くなりになった」。「たまへ」は尊敬語で、祖父に対する敬意。「し」は係助詞「ぞ」に呼応している。 |
6 はべりける | ラ変動詞「はべり」の連用形+過去の助動詞「けり」の連体形。意味は「おりました」。「はべり」は丁寧語で、若き主たちに対する敬意。「ける」は係助詞「ぞ」に呼応している。 |
7 の |
格助詞の主格。意味は「~が」。 「の」の見分け方については、以下のページで詳しく解説をしていますので、よろしかったら、ご確認下さい。 |
8 言ひ置かれたりける | カ行四段動詞「言ひ置く」の未然形+尊敬の助動詞「る」の連用形+完了の助動詞「たり」の連用形+過去の助動詞「けり」の連体形。意味は「言い残しなさった」。「れ」はその人々に対する敬意。 |
9 の | 格助詞の主格。意味は「~が」。 |
10 つかん |
カ行四段動詞「つく」の未然形+仮定の助動詞「ん」の連体形。意味は「つくような」。 「む(ん)」の見分け方については、以下のページで詳しく解説をしていますので、よろしかったら、ご確認下さい。 |
11 なるべき |
ラ行四段動詞「なる」の終止形+推量の助動詞「べし」の連体形。意味は「なるだろう」。「べき」は係助詞「なん」に呼応している。 「べし」の見分け方については、以下のページで詳しく解説をしていますので、よろしかったら、ご確認下さい。 |
12 なん |
係助詞「なん」。「なん」の後に「言ひける・のたまひける」などが省略されている。 係り結びの省略については、以下のページで詳しく解説をしていますので、よろしかったら、ご確認下さい。 |
13 の | 格助詞の主格。意味は「~が」。 |
14 申し置かれしか | カ行四段動詞「申し置く」の未然形+尊敬の助動詞「る」の連用形+過去の助動詞「き」の已然形。意味は「申し置きなさった」。「れ」は父に対する敬意。 |
15 はべる | ラ変動詞「はべり」の連体形。意味は「おります」。丁寧語で、若き主たちに対する敬意。 |
16 なれ | 断定の助動詞「なり」の已然形。 |
17 崩れな | ラ行下二段動詞「崩る」の連用形+完了の助動詞「ぬ」の未然形。意味は「崩れてしまった」。 |
18 うちおほはれ | ハ行四段動詞「うちおほふ」の未然形+受身の助動詞「る」の連用形。意味は「覆いかぶされる」。 |
19 死に | ナ変動詞「死ぬ」の連用形。 |
20 する | サ変動詞「す」の連体形。「する」は係助詞「ぞ」に呼応している。 |
21 退かん | カ行四段動詞「退く」の未然形+意志の助動詞「ん」の終止形。意味は「退こう」。 |
22 見るなり | マ行上一段動詞「見る」の連体形+断定の助動詞「なり」の終止形。意味は「見るのである」。 |
23 をこがり | ラ行四段動詞「をこがる」の連用形。意味は「ばかにする」。 |
24 あざけり | ラ行四段動詞「あざける」の連用形。意味は「嘲笑する」。 |
25 かな | 詠嘆の終助詞。意味は「~だなぁ」。 |
26 崩れん | ラ行下二段動詞「崩る」の未然形+仮定の助動詞「ん」の連体形。意味は「崩れるとしたら」。 |
27 告げたまへ | ガ行下二段動詞「告ぐ」の連用形+ハ行四段活用の補助動詞「たまふ」の命令形。意味は「お告げください」。「たまへ」は尊敬語で、女に対する敬意。 |
28 心得ず | ア行下二段動詞「心得(こころう)」の未然形+打消の助動詞「ず」の連用形。意味は「理解しない」。 |
29 さらなり | ナリ活用の形容動詞「さらなり」の終止形。意味は「もちろんだ」。 |
30 いかでかは | 連語。意味は「どうして」。 |
31 逃げん | ガ行下二段動詞「逃ぐ」の未然形+意志の助動詞「ん」の終止形。意味は「逃げよう」。 |
32 告げ申さざるべき |
ガ行下二段動詞「告ぐ」の連体形+サ行四段活用の補助動詞「申す」の未然形+打消の助動詞「ず」の連体形+推量の助動詞「べし」の連体形。意味は「告げ申し上げないだろう」。「申さ」は謙譲語で、若き主たちに対する敬意。「べき」は「いかでか」の「か(係助詞)」に呼応している。 |
33 下りにけり | ラ行四段動詞「下る」の連用形+完了の助動詞「ぬ」の連用形+過去の助動詞「けり」の終止形。意味は「下りてしまった」。 |
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現代語訳
いかがでしたでしょうか。
この箇所で特に重要な文法事項は次の通りです。
・敬語表現は誰に対する敬意かが分かるようにしておきましょう。
(注3・5・6・8・14・15・27・32)
・係り結びの省略は省略された語が補えるようにしておきましょう。(注12)
・助動詞「べし」・「る」・「ん」の意味が識別できるようにしておきましょう。
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