では、「海幸山幸」の前回の続きの文章を見ていきましょう。
前回の解説はこちら。
本文
ここをもちてつぶさに【注22】海の神の【注23】教へし【注24】言のごとく【注25】して、その鉤を与へたまひき【注26】。かれ、それよりのちは、いよよ【注27】貧しくなり【注28】て、さらに荒き心を起こして迫め来。攻めむ【注29】とする時、塩盈珠をいだして溺らし、それ愁へ請へば、塩乾珠をいだして救ひ、かくなやまし苦しめたまふ【注30】時、稽首き【注31】てまをさ【注32】く、「僕は今よりのち、汝命の昼夜の守護人となり【注33】て仕へまつらむ【注34】。」とまをしき【注35】。かれ、今に至るまで、その溺れし【注36】時の種々の態、絶えず仕へまつるなり【注37】。
重要な品詞と語句の解説
語句【注】 | 品詞と意味 |
1 かれ | 接続詞。意味は「それで・そこで」。 |
2 尋長 | 名詞。身長のこと。読みは「たけ・ひろたけ」。 |
3 まをす | サ行四段動詞「まをす」の連体形。意味は「申し上げる」。「申す」の古形。謙譲語で、海の神に対する敬意。 |
4 一尋和邇 | 成人男子が両手を広げたくらいの大きさのワニのこと。 |
5 まをさ | サ行四段動詞「まをす」の未然形。意味は「申し上げる」。「申す」の古形。謙譲語で、海の神に対する敬意。 |
6 すなはち | 副詞。意味は「すぐに」。 |
7 還り来む | カ変動詞「還り来」の未然形+意志の助動詞「む」の終止形。意味は「帰ってきましょう」。
「む(ん)」の見分け方については、以下のページで詳しく解説をしていますので、よろしかったら、ご確認下さい。 |
8 まをしき | サ行四段動詞「まをす」の連用形+過去の助動詞「き」の終止形。意味は「申し上げた」。「まをし」は謙譲語で、海の神に対する敬意。 |
9 しからば | 接続詞。意味は「それならば」。 |
10 送りまつれ | ラ行四段動詞「送る」の連用形+ラ行四段活用の補助動詞「まつる」の命令形。意味は「送り差し上げよ」。「まつれ」は謙譲語で、火遠理命に対する敬意。 |
11 わたる | ラ行四段動詞「わたる」の連体形。意味は「行く」。 |
12 な恐れかしこませまつりそ | 副詞「な」+ラ行下二段動詞「恐る」の連用形+マ行四段動詞「かしこむ」の未然形+使役の助動詞「す」の連用形+ラ行四段活用の補助動詞「まつる」の連用形+終助詞「そ」。意味は「怖がらせ恐れさせ差し上げるな」。「まつり」は謙譲語で、火遠理命に対する敬意。
禁止表現「な~そ」については、以下のページで詳しく解説をしていますので、よろしかったら、ご確認下さい。 |
13 送りいだしまつりき | サ行四段動詞「送りいだす」の連用形+ラ行四段活用の補助動詞「まつる」の連用形+過去の助動詞「き」の終止形。意味は「送り出し差し上げた」。「まつり」は謙譲語で、火遠理命に対する敬意。 |
14 ちぎりし | ラ行四段動詞「ちぎる」の連用形+過去の助動詞「き」の連体形。意味は「約束した」。 |
15 ごと | 比況の助動詞「ごとし」の語幹。意味は「ようだ」。 |
16 送りまつりき | ラ行四段動詞「送る」の連用形+ラ行四段活用の補助動詞「まつる」の連用形+過去の助動詞「き」の終止形。意味は「送り差し上げた」。「まつり」は謙譲語で、火遠理命に対する敬意。 |
17 返さむ | サ行四段動詞「返す」の未然形+意志の助動詞「む」の終止形。意味は「返そう」。 |
18 したまふ | サ変動詞「す」の連用形+ハ行四段活用の補助動詞「たまふ」の連体形。意味は「しなさる」。「たまふ」は尊敬語で、火遠理命に対する敬意。 |
19 佩かせる | カ行四段動詞「佩く」の未然形+尊敬の助動詞「せる」の連体形。意味は「腰に付けなさっている」。「せる」は、火遠理命に対する敬意。 |
20 著け | カ行下二段動詞「著(つ)く」の連用形。 |
21 返したまひき | サ行四段動詞「返す」の連用形+ハ行四段活用の補助動詞「たまふ」の連用形+過去の助動詞「き」の終止形。意味は「お返しになった」。「たまひ」は尊敬語で、火遠理命に対する敬意。 |
22 つぶさに | ナリ活用の形容動詞「つぶさなり」の連用形。意味は「完全なさま」。 |
23 の | 格助詞の主格。意味は「~が」。
「の」の見分け方については、以下のページで詳しく解説をしていますので、よろしかったら、ご確認下さい。 |
24 教へし | ハ行下二段動詞「教ふ」の連用形+過去の助動詞「き」の連体形。意味は「教えた」。 |
25 ごとく | 比況の助動詞「ごとし」の連用形。意味は「~のようだ」。 |
26 与へたまひき | ハ行下二段動詞「与ふ」の連用形+ハ行四段活用の補助動詞「たまふ」の連用形+過去の助動詞「き」の終止形。意味は「お与えになった」。「たまひ」は尊敬語で、火遠理命に対する敬意。 |
27 いよよ | 副詞。意味は「ますます・いよいよ」。 |
28 なり | ラ行四段動詞「なる」の連用形。 |
29 攻めむ | マ行下二段動詞「攻む」の未然形+意志の助動詞「む」の終止形。意味は「攻めよう」。 |
30 苦しめたまふ | マ行下二段動詞「苦しむ」の連用形+ハ行四段活用の補助動詞「たまふ」の連体形。意味は「苦しめなさる」。「たまふ」は尊敬語で、火遠理命に対する敬意。 |
31 稽首き | カ行四段動詞「稽首(ぬかづ)く」の連用形。意味は「額を地につけ拝む」。 |
32 まをさ | サ行四段動詞「まをす」の未然形。意味は「申し上げる」。「申す」の古形。謙譲語で、火遠理命に対する敬意。 |
33 なり | ラ行四段動詞「なる」の連用形。 |
34 仕へまつらむ | ハ行下二段動詞「仕ふ」の連用形+ラ行四段活用の補助動詞「まつる」の未然形+意志の助動詞「む」の終止形。意味は「お仕え差し上げよう」。「まつら」は謙譲語で、火遠理命に対する敬意。 |
35 まをしき | サ行四段動詞「まをす」の連用形+過去の助動詞「き」の終止形。意味は「申し上げた」。「まをし」は謙譲語で、火遠理命に対する敬意。 |
36 溺れし | ラ行下二段動詞「溺る」の連用形+過去の助動詞「き」の連体形。意味は「溺れた」。 |
37 仕へまつるなり | ハ行下二段動詞「仕ふ」の連用形+ラ行四段活用の補助動詞「まつる」の連体形+断定の助動詞「なり」の終止形。意味は「お仕え差し上げているのである」。「まつる」は謙譲語で、火遠理命に対する敬意。 |
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現代語訳
こうして、火遠理命は完璧に海の神が教えて言葉通りのことをして、釣り針を兄にお与えになった。それで、それより以後、兄の火照命はいよいよ貧しくなっていき、前にもまして荒々しい心を起こし火遠理命のところへ攻めて来た。兄の火照命が攻めようとする時、火遠理命は塩盈珠を出して溺れさせ、火照命が嘆いて許しを乞えば、塩乾珠を出して救い、このように悩まし苦しめなさったところ、火照命が額を地につけて拝んで申し上げた。「私は今後、あなた様の昼夜の守護人となってお仕え差し上げましょう。」と申し上げた。それで、今に至るまで、その溺れた時の仕草を絶えることなく伝え、お仕え差し上げているのである。
いかがでしたでしょうか。
この部分で重要なところは以下の通りです。
・注12「な恐れかしこませまつりそ」は重要表現ですので、訳せるようにしておきましょう。
・注28・33・37の「なり」を見分けられるようにしておきましょう(注28・33は動詞、注37は助動詞)。
ありがとうございました。
とても勉強になりました。
しかし、釣り針
見つからないですね。
そうですね。
全然見つからないですね。
あっ、いた。
弟よ、すまんすまん。
釣り針、わしの道具箱の
中にあったわー。
えっ?あったの。
どうりで、こんなに
探したのに
見つからないわ。
よかったですね。
見つかって。
はい。それよりも
探すのを手伝ってくれた
お礼を何かしなければ。
いえいえ、
お礼なんて結構です。
気にしないでください。
いえ、そうはいきません。
そうだ!私たち兄弟が
かぶっているかぶり物、
差し上げますよ。
いえ(笑)。
結構です。
それをかぶって町を
歩く勇気ないので。
これ、結構流行っていて
皆、かぶってますよ。
恥ずかしくないですよ。
流行ってないですって(笑)。
私、見たことないですよ。
頭に魚かぶっている人。
えー。本当?
これかぶっている人、
見たことない?
いたーーーー。
テレビで見たことあるーー。
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